【上期総括】ジークレスト『夢100』総監督の佐野哲也氏に聞く女性向けゲーム市場のいま…ニーズの明確化で大きく成長、下期以降は多様なタイトルが登場する



スマートフォンアプリ業界に身を置く方々に話を伺い、2016年上期の市場動向と下期のトレンドを読み解く特別企画『ゲームアプリ市場のキーマンに訊く2016年上期振り返り』。今回はジークレスト取締役で、『夢王国と眠れる100人の王子様』(以下、『夢100』)総監督の佐野哲也氏にインタビューを行い、上半期の女性向けゲーム市場と同社としての取り組みを振り返ってもらうとともに、下半期の展望について語ってもらった。


 
■女性向けゲームのニーズの明確化で市場が一気に立ち上がった

――:よろしくお願いいたします。まず、お仕事から教えていただきたいのですが。

私は、弊社では取締役であり、『夢100』では総監督という立場にあります。まとめ役のような存在です。一緒にプロジェクトを立ち上げた女性プロデューサーがいまして、彼女が実現しようとしていることを組織面やリソース面でサポートしていくことが私の主な仕事です。


――:2016年のアプリマーケットは女性向けのアプリが伸びてきた印象がありますが、女性向けゲームの市場の動きを振り返って感想をお願いします。

直近1年というタームで見ると、女性向けのアプリが増えてきました。元々、女性向けのアプリで遊びたいという女性層は存在していたのですが、それ以前はそうしたニーズに応える女性向けのアプリは少ない状況だったと思います。

この1年で、女性のお客様からどのようなゲームが受け入れられるのかが明確になってきたといえます。ニーズが明確になってきたことで市場として認知され、今後、多くの会社が女性向けアプリを作っていくのではないかとみています。女性向けゲームという意味ではマーケットはまだ成長途上にありますから。

 


――:2年ほど前までは、女性向けゲームといえば、ほとんどノベルゲームだったと思いますが、『夢100』はいまや女性向けアプリの代表作になりましたね。

そうであってほしいですね。弊社としては、出すからには他社と違うものを出さないといけないと思っていました。具体的には、キャラクターやシナリオには特に力を入れましたし、パズルの部分などもリッチにしています。そして、遊んでいても飽きがこないように、常に楽しく、そして変化があるように心がけました。


 
■メンバーの好きに偏らず客観的に検証を繰り返した

――:その力を入れたキャラクターやシナリオを作っていくにあたって気をつけたところはありますか?

開発・運営チームのメンバーがまさにターゲットとする層に一致していますので、メンバーの声を反映させながら作ったところが一番こだわったところです。一人の企画者が企画してというよりは、チームメンバー全員で議論しながら、自分たちがアプリを支持するかどうかを考えて作っています。

ただ、自分たちのそうした好きを突き詰めるだけでなく、客観的に面白いかどうか、そしてヒットするかどうかも常に検証していました。弊社は男女比が半々の会社となり、他社と比較して女性が多い会社になるかと思うのですが、女性社員の声を聞き回って客観的に企画を評価しています。



――:パズルの部分について、どういった点に気をつけたのでしょうか。リッチですが、あまり難しすぎないという印象を受けました。

ターゲット層にあった形で常に改善を行ってきました。パズルは何百回、何千回、人によっては何万回とプレイする可能性がありますので、飽きずにテンポよくでき、かつリッチな形にしたいと考えていました。

ただ、当初想定していたお客様の反応と違う場合も考えられますので、ターゲット層と一致する社員に触ってもらい、どのようにプレイするのか反応を見たり、細かく感想を聞いたりしながら、随時、検証を行ってきました。一つの機能についても『この機能に気づいてもらえるのだろうか』というところから検証していきました。

 

――:なるほど。御社はPCゲーム時代から女性向けゲームに強く、mixiアプリや@gamesなど女性向けゲームが多い印象があるのですが、こうした経験は生きているのでしょうか?

もちろんです。弊社は、女性向けゲームもそうなのですが、いわゆる一般的なRPGも作ってきました。リリースしたRPGのなかには、思っていた以上に女性のお客様からの反応が良かったものもありました。女性のお客様がどのようなポイントを好むのかが知見やノウハウとしてありますので、今の女性向けゲーム作りに生きていると思います。


――:ゲームを作ったり運営したりする中で気を配っているところはありますか?

お客様の声ですね。お問い合わせを多くいただくことはもちろんですが、twitterなどのソーシャルメディアからいただくご要望や危惧されていることを常に拾って、細かく改善につなげるようにしています。これは『夢100』だけでなく、弊社で展開するサービス全般に言えるもので、会社として重点的に取り組んでいることです。

例えば、『夢100』の事例で言いますと、遊びやすくするため、ゲーム内に出てくる王子様の一覧のソート機能の改善を行ったことがありました。しかし、機能リリース後に、お客様からは使いづらいといった声を頂戴しましたので、ご意見を参考に少しずつ改善を進めることにしました。



――:ところで、アプリではよく先行者メリットが効くといいますが、そういう部分はあったんでしょうか。

先行者メリットがあったかというと、最初はそうかもしれません。1年と少し前に弊社アプリ『夢100』をリリースしたのですが、当初は同じようなアプリがほとんどない状況でした。それから約1か月後に、Happy Elements様の『あんさんぶるスターズ!』(以下、『あんスタ』)がリリースされて、市場が盛り上がりを見せ、先行者として再認識されたことでお客様から支持を得られたのではないでしょうか。


 
■『あんスタ』コラボは仲間として一緒に盛り上げたいと思った

――:Happy Elements社の『あんスタ』とのコラボには驚きました。

おかげさまで先日コラボをさせていただきました。弊社とHappy Elements様のアプリが、一定のユーザーの皆様の支持を得ることができてよかったと思っています。


――:どういう経緯でコラボをされたのでしょうか。

1年くらい前から話はしていました。Happy Elements様の新井社長と私がランチをしてコラボができたら良いねという話をしていました。当時はすぐにという話ではなく、こういう取り組みができたら良いねという話でした。具体的に内容が固まってきたのは、2016年の年始だったと思います。
 


――:なぜコラボをしようと思われたのでしょうか?

『夢100』や『あんスタ』などの女性向けゲームは、当時のアプリマーケットでは数タイトルしかない状況で、もっと市場として盛り上げたいと考えていました。ここではライバルというよりは、市場を盛り上げていく仲間として、いろいろなお客様に触れていただくために、一緒に協力していくことが一番良いと考えていたからです。


――:今回の『あんスタ』に限らず、同じ志を持った他のアプリでもいろいろな取り組みを行っていきたいということでしょうか?

そうですね。ゲームをプレイされる両者のお客様が一番盛り上がる形が良いと思っています。そのような取り組みができればぜひ検討したいと思っています。


 
■2016年下期の見通し

――:2016年下期の女性向けゲームのマーケットの見通しに関してお聞きしたいのですが、どのようになっていくと思われますか?

下期は、もっとさまざまな種類の女性向けのゲームアプリが出てくるのではないかと思っています。女性向けゲームに対するお客様の認知も拡大して、女性向けゲームのユーザー層はもっと増えると思っています。

そのなかで、シナリオやメインストーリーなどゲームの中身も含めより細分化されたゲームが出てくると思っています。アプリマーケットには、これまでいろいろなカテゴリーのゲームが出てきましたが、女性向けゲームに関しても同様の動きが出てくるのではないでしょうか。

また、アプリだけでなく、いろいろなメディアとの取り組みも増えていくとみています。いまも、アニメ化や舞台化、グッズ展開など、様々な取り組みで盛り上がっている事例がたくさんありますが、今後はもっと、アプリのなかだけでなくアプリを超えた取り組みが全体的に活発になるのではないかと思っています。



――:他社さんに聞くと、下期は女性向けゲームがたくさん出るのではというお話も聞きました。いろいろな会社と交流することがあると思いますが、そういうお話は聞きますか?

市場的にさらに盛り上がると思っています。我々はライバルを見て、『こう変えよう』ということではなく、今使っていただいているお客様に支持いただいている部分を着実に伸ばしていく、より良いものにしていくことに注力していきたいと思います。

また、サービスを良くしていく中でこれまでやってきたことのベースを引き上げていきたいと思っています。そして『夢100』に限らず、運営しているサービス全般に関してクオリティを追求していきたいです。リアルなイベントや他のメディアと絡めたサービスの展開ももっと全面的にやりたいと思っています。



――:新作を出される予定はありますか?

『茜さすセカイでキミと詠う』などすでにプレスリリースで発表したものもあります。いま頑張って作っています。
 


――:マーケットに関してですが、御社も含めて既存の女性向けゲームがリーチできていない層はどのような層があると思われますか?

そうですね…。男性ですかね。もちろん、そうなのですが(笑)  『夢100』を利用する方のほとんどが女性ですが、ゲームに関しては中身には相当こだわって作っていますので、男性の方にも触っていただきたいと思っています。

男性が触っても普通にゲームとして面白いゲームだと思います。恋愛のシナリオについては、女性と同じ感じ方ができないケースもあると思いますが、そこだけではなく、パズルRPGの部分や、キャラクター育成は非常に面白いので、ぜひおすすめしたいですね。



――:ありがとうございました。

 
(編集部:木村英彦、協力:森山晃義)
株式会社ジークレスト
https://www.gcrest.com/

会社情報

会社名
株式会社ジークレスト
設立
2003年11月
代表者
代表取締役社長 大辻 純平
決算期
9月
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