【インタビュー】広告を交換し合ってアプリを宣伝…CVR30%と高効率プロモーションを実現する「Applipromotion」の実力とは?

クロスプロモーションと呼ばれるスマートフォンアプリのプロモーション手法をご存知だろうか。アプリ同士で広告を交換するサービスの総称で、サイバーエージェントが2011年12月より「Applipromotion」として国内でサービスを開始した。コストパフォーマンスに優れているだけでなく、個人など小規模なディベロッパーでも簡単に利用できるサービスとして最近にわかに注目を集めている。

前回はサービスの概要を紹介したが(関連記事)、今回は、「Applipromotion」のプロデューサーである百冨聡一郎氏にインタビューの模様をお届けする。資料には書かれていないサービスの特徴やメリットについて話を聞いた。

 

■「Applipromotion」は100%~150%還元

---: まず、サービスの概要を教えてください。

百冨氏: 「Applipromotion」は、サービスは昨年12月21日にリリースしました。そのときは、クローズドでサービス提供を行なっていましたが、3月より正式サービスを開始しました。「Applipromotion」のサービスは、2種類に分かれ、無料で出せる「クロスプロモーション」、有料で広告が出せる「ペイドプロモーション」があります。クロスプロモーションは、バーターで行うアプリ広告の出稿を自動化したもので、国内初のサービスとなります。海外では、プレイヘブンやチャートブーストなどクロスプロモーションサービスがありますね。

---: 対応するOSのアプリは何でしょうか。

百冨氏: iPhoneとAndroidに対応しています。あと、そもそもこのサービスを開始した経緯なんですが、弊社グループ会社で、1ヵ月で100万ダウンロードを記録したアプリがありました。アドネットワークやクロスプロモーションなど様々なプロモーション手法を組み合わせたのですが、分析したところ、導入したクロスプロモーションが一番効果があることが判明しました。日本にはないサービスですので、開発してみたわけです。

---: そういう経緯があったのですか。

百冨氏: そうです。サービスを利用する場合、会員登録完了後、管理画面からダウンロードできるSDKを組み込み、『More Apps』や『オススメアプリ』などのボタンをデベロッパーさんが自由にデザインして頂いて結構です。そして、そのボタンをユーザーがクリックすると、アプリリストが表示されます。アプリリストの表示回数がサーバーに蓄積され、その回数分だけ他のアプリで自分のアプリ広告が表示されるわけです。

---: 公式サイトの表示では、公式サイトには50%~100%還元するということでしたが、実際はどのくらいなのでしょうか?

百冨氏: 実績ベースでは、100%~150%還元されるようにしています。例えば、100回リストを表示していただくと、デフォルトで100回で、状況によっては最大150回までアプリが表示されます。たいていは100回以上表示されます。保証ではございませんが。

---: 表示回数よりも多く還元されるのですか。それは非常にお得ですね。

百冨氏: 実は、今後、最大200%まで還元率を引き上げたいと考えています。次に表示事例ですが、ボタンについては自由にデザイン、配置していただいて結構です。「more apps」や「more games」といったボタンじゃなくても、画像右のように「鈴」などでも良いです。これは当社のアプリなんですが(笑)。

 

 

---: 「NEW」とついているものがありますが、ボタンの表示が分けられるわけですか?

百冨氏: はい。ディベロッパーさんには、ボタンを2種類用意していただくと良いでしょう。ユーザーがその日、ボタンを押してない場合、「NEW」などついた画像の表示をすることもできるのです。ちょっとした画像の出し入れをするだけで、クリック数は実績で10倍に跳ね上がるんです。

 

 

---: そんなに効果があるとは思いませんでした。こういう形式ですと、アプリの画面やUIに与える影響も少なそうですね。

百冨氏: そうなんです。例えば、UIの関係から小さくしか表示できないというディベロッパーさんでも、先ほどお話ししたようなボタンの出し分けをするだけでトラフィックが10倍に上がります。ということは、自分のアプリの広告も10~15倍になって返ってくるわけです。

---: ちょっとしたことですが、導線のクリック率を上げるための重要な施策になりますね。

百冨氏: ディベロッパーさんへの作業負担が少ないのも特徴です。ダウンロードしたSDK一式とアプリケーション識別キー、ボタンを用意していただくだけで導入することができます。SDKにユーザーがその日開いたかどうかのデータを取得するようになっていますので、出し分けなくてもOKです。

---: 管理画面はどんな感じなのでしょうか?

百冨氏: 自分のアプリから何回リストを表示しているか、他のアプリで自分のアプリが何回表示されているかが分かるようになっています。SDKやアプリケーションキーの発行や確認も管理画面から行えます。複数のアプリで導入している場合には、アプリごとに表示することも可能です。この画面ではリスト(Wall Imps)を、15万166回表示し、他のアプリで17万5480回自分のアプリの広告が表示されたことを示しています。

 

 

---: 自分のアプリで広告を表示したものが返ってくるのは、どういうタイミングなんでしょうか。

百冨氏: 現在のところ、その日表示したリストの表示回数は、翌日の午前1時に閉めて集計します。還元については、閉まった午前1時から還元されるようになります。どんな大きなアプリであったとしても、せいぜ12時間経過すると、100%還元が完了します。いっぱい出したのに返ってこないんじゃないかと心配されることもあるかと思いますが、そういうことは全くありません。

 

■個人開発のアプリでこそ入れてほしい

---: アプリ内にバナー広告を掲載する場合、「Applipromotion」のボタンとバッティングすることはないんですか?

百冨氏: その心配もありません。無料アプリをリリースされている会社ですと、アドネットワークなどで収益を上げるケースが多いかと思いますが、肝心のユーザーを集める段階でお金をかけていては意味がありません。「Applipromotion」とセットで当社のサービスをお使いいただくことで、お金を使わずにユーザーを集めることができます。空いている場所にボタンを設置していただくだけですので、アドネットワークなどと併用することができます。むしろアドネットワークとセットでご利用頂いて、集客とマネタイズの双方を成功させていただきたいと思っています。

 

 

---: このサービスは、個人の開発したアプリでも導入できるのですか?

百冨氏: 個人、法人問わず、どなたでも導入いただけます。無料のクロスプロモーションについては、個人の方にこそ導入していただきたいと考えています。アプリにかぎらず、メディアは、立ち上げた当初、他のメディアとバーターで広告を出し合うといったことが行われますが、1件1件探すのは大変ですよね。当社のサービスを使っていただくことで、自動的に広告の交換先が見つかるなど手間が省けます。登録時に審査を行いますが、アプリが劇的にエロい、暴力的な内容など公序良俗に反する内容でなければ問題ありません。

---: 登録はオンライン上でも可能でしょうか? 書面での契約手続きはあると、小規模な会社や個人ですと大変ですよね。

百冨氏: 全てオンラインで登録できます。サイトからアカウント登録していただくと、1週間から3週間審査を行います。登録が完了したら、アプリを登録していただくことになります。アプリについては、登録された後の事後審査という形で見ておりますが、先ほどいったような公序良俗に反するものでない限りは大丈夫です。

---: ペイドプロモーションは、個人でも利用できるのでしょうか。

百冨氏: ペイドプロモーションについては、個人の方でも気軽に利用していただけるよう、クレジットカードで支払うことができます。面倒な企業対企業の契約もなく、クレジットカードで出稿したい分だけお支払いいただければ決済が完了します。個人の開発者であっても、500円や1000円でも喜んで対応させていただきます。もちろん、企業の場合、広告代理店などを経由して利用いただくことも可能です。

---: 出稿できるアプリはゲームだけなんでしょうか?

百冨氏: 海外のサービスでは、ゲームに限定しているケースが多いですが、当社のサービスでは、ゲームには限定していません。ツールでもエンターテイメントでもなんでも大丈夫です。

---: SDKを導入する必要があるとのことですが、ネイティブアプリ限定ですか?

百冨氏: いえ、WEBアプリなどにも対応しています。対応するSDKについては、お問い合わせいただければ、JavaScript版を提供しています。「PhoneGap」で開発したアプリや、WEBアプリにも「Applipromotion」が導入することができます。今後、Facebookアプリなども普及するでしょうし、HTMLベースで作ったネイティブアプリのニーズが出てくるだろうと判断しました。また、最近問題になっているUDID(ユニーク・デバイスID)を一切使ってません。アプリに組み込んだとしても、App StoreやGoogle Playからリジェクトされるようなリスクはありません。

---: 素朴な疑問なんですが、御社はどうやって収益を上げるのでしょうか?

百冨氏: その点は、ペイドプロモーションです。当社では、このサービスの目的を2つ設定しています。ひとつめがサービスとして収益を上げることで、ふたつめが当社の開発したアプリ広告を無料で出すことです。アプリリストには、10種類のアプリが表示されます。内訳は、クロスプロモーションのアプリ、有料広告のアプリ、当社の開発したアプリです。よって、無料でリスト表示される回数が多くなるほど、有料の広告枠の在庫も増えることになります。

---: ペイドプロモーションは純広告なんでしょうか?

百冨氏: いえ、ペイドプロモーションは、クリック課金型です。サイトリスティングのような入札制を採用しています。入札していただいた金額と、広告の品質によって順位が変動して変わる仕組みです。これも全て自動で行われます。アドネットワークへの出稿と異なり、リスティング広告のような形で運用できるメリットがあります。効果を見ながらすぐに広告を切り替えたり、広告をたくさん出したい場合には入札額をあげたり、といったことが可能です。原稿も同時に4本入れることができますし、PDCAが非常に回しやすいかと思います。

 

■コンバージョンレートはアドネットワークの3~5倍

---: 差し支えない範囲で教えていただければと思うのですが、コンバージョンレートはどのくらいになるのでしょうか?

百冨氏: アドネットワークにアプリの広告を出稿して、ユーザーがApp Storeに移動してアプリをインストールする件数を1としますと、「Applipromotion」経由でのコンバージョンレートは、実績値ベースで通常のアドネットワーク広告の3~5倍となります。あまりダウンロードされないような堅めのアプリでこの水準でしたから、ゲームアプリだともっと高くなるはずです。

---: かなり高いですね。そんな水準になった理由はなんでしょうか?

百冨氏: 通常のアドネットワークですと、いわゆる押し間違えなど無駄クリックがどうしても出てしまうのですが、アプリリストの場合ですと、アプリの説明を見てからクリックするので必然的にコンバージョンレートが高くなるのです。ゲーム系のアプリですと、コンバージョンレートは、20%~30%計測されたケースもあります。海外だと、もっと高くて60%~70%にもなるようです。

---: 普通では考えられない数字ですね。

百冨氏: 私も嘘だと思って作ってみたら、この水準になりましたから(笑)。ですから、個人でゲームを開発されている方には最適なサービスだと思います。大量に表示されるには、自分のアプリで「数」を表示しないといけませんので多くのダウンロードを求めるのは難しいかもしれませんが、非常に効率良くユーザーを集めることができます。

---: ペイドプロモーションのクリック単価はどのくらいになるのでしょうか?

百冨氏: 一般的なアドネットワークは15円になりますけど、単価は少し高くて45円になります。とはいえ、アドネットワークに比べて、コンバージョンレートが3~5倍と圧倒的に高いので、結果的には高い効果を出せます。導入いただいているお客様からは継続的に利用されていますね。

---: 広告在庫に関わる話なので確認しておきたいのですが、導入件数はどのくらいなんでしょうか?

百冨氏: アプリの数でいうと、現在、決まっているもので450本程度です。そこには審査中のアプリも含まれますので、実際に配信されているものは約150アプリとなります。

---: 確か昨年のリリースでは、2012年12月までに参加アプリ数1000アプリを目指すとのことでしたが、2ヶ月弱でもうこの水準まで伸びたのですか。うまくいった事例などはありますか?

百冨氏: 一番良かったものでは、リリース前に導入していただいたアプリで、「App Store」の無料ランキングで5営業日連続で1位を取ったアプリがあります。現在、App Storeでは8万ダウンロードされると1位になるといわれていますから、1位になっている間だけで40万件はダウンロードされたことになります。もちろん、アプリ自体が面白かったことが大きいのですが、入れてなかったとしたら、ランキングの落ち方はもっと激しかったと考えられます。半分程度は寄与できたのではないでしょうか。

 

■リリース時に導入することが成功のカギ

---: やはりサービスの導入は、アプリのリリース時が一番良さそうですね。

百冨氏: そうですね。当社としても、iPhoneアプリの場合、リリース時に導入することをおすすめしています。「App Store」では初動の良いアプリは一気に順位を上げていきますが、すぐに順位を落とす傾向にあります。リリース時に「Applipromotion」を導入していただくと、初動で自分のアプリでアプリリストを表示した実績が「貯金」となります。そのため、ランキングが落ち始める局面で広告として還元され、ダウンロード数がそれほど落ちずに緩やかに低下していくんです。上位に行くアプリであればあるほど、上位に長く滞在できるようになります。

---: ここまでお聞きした印象ですが、「貯金」がないと広告が表示されないわけですから、ある程度、力のあるアプリでないと効果は出づらいような印象を持ちましたが…。

百冨氏: そうです。入り口となるトラフィックがないと、貯金が稼げませんので、魅力のあるアプリでないと効果は実感しづらいです。しかし、重ねていいますが、ほとんどのアプリはリリースするタイミングが一番順位とダウンロード数が稼げますので、このタイミングに導入し、貯金を稼いでいただくことで、ランクアップにブーストをかけることができるだけでなく、その後の順位とダウンロード数の低下を緩やかにすることができます。一度導入されたお客様からは、その後リリースされるアプリで継続的に使っていただいています。

---: なるほど。アプリのリリースをする時、クロスプロモーションとペイドプロモーションを組み合わせて利用することはできますか?

百冨氏: もちろん、可能です。例えば、一つのモデルケースですが、プロモーションのやり方として、リリース直後に、ペイドプロモーションにアプリの広告出稿を行なってダウンロード数を稼ぎつつ、クロスプロモーションの貯金を稼いでいきます。その後、ランキングが上昇する過程で貯金が効果を発揮して、ランクアップ時にブーストされる、もしくは、ランクダウンが緩和される、といった使い方ができるかと思います。

---: 最後に今後の課題を教えて下さい。

百冨氏: 今後の課題は「量」ですね。大量にダウンロードを稼ぐのはまだ難しいですが、色々なアプリに取り入れていただいたり、当社でも今後2年間で100サービスを提供する方針ですので、そのスマートフォンアプリにはほぼ全てに導入されます。ですから、広告在庫が増えていき、こうした課題も解決されていくと考えています。「Applipromotion」は、個人でも無料でアプリ広告が出せて、有料広告もアドネットワークより効率がいい、そして、当社にとっては、無料で自社アプリの広告が出せます。その意味で、利害関係者の誰もが喜べる仕組みなんです。アプリ開発に携わる方にはどんどん活用していただきたいと考えています。

 

 

■関連サイト

Applipromotion

株式会社サイバーエージェント
http://www.cyberagent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サイバーエージェント
設立
1998年3月
代表者
代表取締役 藤田 晋
決算期
9月
直近業績
売上高7202億0700万円、営業利益245億5700万円、経常利益249億1500万円、最終利益53億3200万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
4751
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