【イベント】KLab、WFS、f4samuraiのエンジニアトップが語るゲーム開発の魅力とは…他の業界との違いや魅力も語られた座談会をレポート


アールストーンの主催のもと、去る三月、「他業界出身のエンジニアトップが語るゲーム開発の魅力」と題したオンラインイベントを開催された。

本ウェビナーでは、KLab株式会社、株式会社WFS、株式会社f4samuraiのエンジニアトップが登壇し、それぞれの開発環境や開発において意識していることについて語られている。
 
それぞれが他業界出身のエンジニアということもあり、他業界経験者からみたゲーム開発の魅力なども語られていた。
 
また、昨今のコロナ禍におけるリモートワークでの取り組みについても紹介され、各社の昨今の働き方についても言及されていた。本稿ではその模様をレポートする。
 

■会社のルーツや考えが垣間見える、各社の開発環境は?

 
まずはじめに、3社の開発環境について話がされた。f4samuraiの開発環境ではゲームエンジンはUnityを中心に開発されているが、同社の開発しているUIの8割はweb上にて実装されていると、CTO松野氏は話す。
 


バトルシーンなど複雑なUI部分についてはネイティブにて開発しているが、それ以外はhtmlやjavascriptなどweb技術をつかった開発が多く、f4samuraiではweb制作会社出身のエンジニアも多いそうだ。
 
サーバーサイドではjavaを活用しており、ゲーム会社では珍しい事例となっている。
インフラ部分もサーバーサイドエンジニアが管掌しており、ゲームというよりはシステム構築志向のエンタープライズサービスに携わっていたエンジニアが多いそうだ。
 
java採用の理由としては、CTOである松野氏自身がSler出身としてjavaでの開発経験があったからこそという前提もあるが、エンジニア間でのスキルギャップが少ないという点もメリットとして挙げていた。またライブラリなどの開発環境が充実しているので、中途入社のエンジニアでも比較的キャッチアップしやすい点を特徴として挙げていた。

  
続いて、WFSの紙谷氏からはUnityはもちろんUnrealEngineなど、ネイティブ開発においては多くのエンジンを活用しているが、サーバーについてはphp言語をメインで使用しているとのこと。
 
これは、親会社であるグリーがSNSから成長してきたルーツがあり、phpを最大限に活用するためのモジュール群や運用ノウハウがあるからこそだと話す。もちろん、ツールとしてはrubyやGoなどの他言語も活用しているそうだ。
 
バックエンドについては、これまではAWSの利用がほとんどだったそうだが、今後はマルチクラウド戦略を意識しており、GCPなども導入しているようだ。データ分析周りではBigQueryを導入し、データベース周りもCloud Spanner導入を徐々に行なっているなど、最近では様々な技術を取り入れるよう意識的に取り組んでいるとも話した。



KLabは長期運営のプロジェクトが多いこともあり、開発時期によって採用技術が少しずつ異なっている。開発中のプロジェクトについてはUnity+Python+AWS+Auroraを利用していると塙氏は話す。
 
バックエンドについてはオンプレからクラウドへのシフトが進んでおり、ゲームにはAWS、分析基盤にはGCPを活用しているそうだ。
 
サーバサイド言語には主にPythonを採用している。採用の理由としてPython自体に開発環境の充実などの利点があるのはもちろんだが、Pythonのコアコミッターが社内に在籍している点もあるようだ。性能や機能でトラブルがあった場合にソースコードレベルで確認・修正できるのはOSSならではのメリットであり、把握度が高いスタッフがいることでそのメリットを最大化できるという。
 
さらに、リアルタイム通信サーバは非同期処理が得意なGo言語で実装している。過去に外部ソリューションを利用して不満点があったそうだが、要所要所で自社開発を選択できるのも技術力の表れといえるかもしれない。
 
また、KLabでは独自のゲームエンジン「Playground」をもつのも特徴的だ。こちらも社内の少数精鋭にて実現されたとのことで、新技術への取り組みは社内文化として定着しているとのことだ。

 

■3社からみたゲーム開発の魅力

 


それぞれの開発環境について紹介された後、各社からゲーム開発の魅力についても触れられた。
 
紙谷氏からは、ゲーム開発の特徴として、開発着手時点では仕様の詳細まで固っていることは少なく、基本走りながら開発を進めていくことが特徴として挙げられた。
 
もちろん納期はあるので、他職種チームとコミュニケーションを取る中で目指すゴールを設定しながら進めていくそうだが、しっかり仕様を固めてから開発を進める業界にいるエンジニアからは新鮮に感じる一面もあるのではと話した。
 
また、開発をして終わりではなく、運用もしていく必要もあるので、新規開発から運用への考え方の切り替えも意識する必要があるとも示した。ゲームでは一度に大量のユーザーが参加してくるので、バックエンドのエンジニアの苦労も多いとも話す。
 
ただ、ユーザー評価や売り上げがダイレクトに感じられるので、その喜びはかけがえのないものだと話した。
 
例えば、WFSのタイトルではスタッフロールを流す作品もあるそうだが、紙谷氏自身、子供の頃にゲームのエンドロールで映るスタッフに憧れを持っていたそうで、自身の名前が流れた時は感動も一入だと振り返っていた。
 


KLab塙氏は、エンジニア視点の魅力として「技術的な難易度の高さ」を挙げる。全世界155か国にゲームを配信する同社では、秒間10,000APIリクエストのトラフィックを処理するタイトルもあるという。
 
こうした大規模なゲームタイトルだからこそ、高難易度の技術課題に直面することも多く、その課題に試行錯誤して取り組んでいけることにエンジニアとしての楽しさがあると話した。「これまで一度も、リリース直後にサーバーダウンをさせたことがない」という驚きのエピソードも紹介された。KLabには異業種出身ながら腕に覚えのある技術者が多く在籍し、彼らの挑戦が実績として表れているようだ。
 
また、ゲームビジネスにおいては、様々なチームメンバーとの関わりもやりがいのひとつだと塙氏は話す。エンジニア一つをとっても、サーバーサイドやクライアントサイド、描画周りなど様々な技術者がおり、異なるスキルセットのメンバーと1つのゲームを作り上げる体験は刺激的だという。
 
技術者以外にもプランナーやデザイナーなども含めるとリリース直前だと100人規模のチームになる。このように多くの人間が関わるからこその多様性もゲームビジネスの魅力の一つだと話す。他職種のプロフェッショナルたちと連携しながらゲームを作り上げていくこと自体の楽しさはもちろん、技術力が売上やアクティブユーザー数などの数値に反映され、ビジネスにも大きな影響を与えられるのがやりがいにつながるという。


 
f4samuraiの松野氏からは前職との違いという切り口が話された。ゲーム開発においては、ユーザーの声を直接聞くことができるのがやりがいだと話す。
 
エンタープライズシステムの開発だと、”BtoBtoC”といったビジネスモデルが多く、中々使用者の声が聞こえづらいものだ。その点、ゲームではユーザーからの声がダイレクトに聞けるのでやりがいや喜びが強いと話した。
 
実際に、ゲームのコミュニティの存在に感謝されたエピソードが印象的だったと話す松野氏。大変な一面もあるが、ゲーム開発の何よりの魅力だと話し、受託ではなく自社開発で行うことによって、その喜びはより一層感じられるので、今後も自社開発として行なっていきたいと話した。
 
 

■ゲーム開発で大事にしていることとコロナ禍での働き方について

 
続いて、ゲーム開発で大事にしていることとコロナ禍における働き方というテーマに対して、松野氏からは、「サーバーやインフラは動いて当たり前」と見られがちだが、その当たり前をしっかりと行った上で、いかに面白い部分を作り出せるかも大切にしたいと話した。
 
f4samuraiでは、プロジェクト単位でチームが活動することが多く、エンジニアが施策についてもコメントすることや、他のメンバーも仕様を提案することがあるそうだ。この点も自社開発を行なっているメリットの一つだと話した。
 
コロナ禍においては、8割以上が完全リモートワークになっているそうで、コミュニケーションの課題は抱えながらも、バーチャルオフィスなどを導入したりと、解消に向けて積極的に取り組んでいるそうだ。



▲バーチャルオフィス上での朝会の様子。

 
KLabは、技術者の自主性やチャレンジ精神を尊重すると塙氏は話す。例えば社内支援制度として、”どぶろく制度”というものがあり、勤務時間の10%を好きなことに時間を注いで良いという。
 

 
現在の業務やプロジェクトに直接つながらなくとも、自由に課題に取り組めるという。各エンジニアのチャレンジを尊重する支援制度として多くの社員が活用しているそうだ。その結果、プロジェクトに貢献するような成果がでているというのも面白い。前出の自社エンジン「Playground」も、どぶろく制度から生まれたという。
 
リモートワークについては全社で9割以上、プログラマについては、ほぼ全員が在宅で勤務中とのこと。環境面での在宅勤務の移行についても、早々に移行が進んだと話す。スタッフからも歓迎されており、ゲーム開発に専念できるという声が出ているそうだ。

WFSでは、社員には会社が取り組んできたことなどをしっかりと伝えた上で、社員のキャリアやスキルアップにも向き合っていく方針をとっていると話した。
 
1on1ミーティング、特にオンボーディング時においても工夫がなされており、通常は直属の上長と行うものだが、WFSでは別グループのマネージャーとも1on1を実施しているそうだ。
 
そこでは、直接の業務以外での悩みなどを話し、その社員自身のキャリアや働きやすさを向上させるようにしていると話した。
 
最後に、他業界から入社した人の活躍例について教えて欲しいという質問が挙がり、それぞれの会社からは別業界出身という目線にてビジネス的にも行かせれれる部分は大いにあるので、活躍できる道は様々あると話した。
 
例えば、エンタープライズシステムを開発していた人ではアーキテクチャ制作や基盤、環境構築作りにて長けているので、得意分野でも十分に活躍できるとしてセミナーは終えられた。

 



■登壇者情報
・KLab株式会社
専門執行役員 CTO
塙与志夫 
大学院博士課程在学中にCTOとして知人とベンチャー企業を立ち上げ。テレビ局の携帯サイト移行プロジェクトをKLab株式会社との2社連合で受託したのをきっかけに2011年7月にKLab株式会社に入社。ゲームプロジェクトのエンジニアを経て横断組織のマネージャー。2014年4月より同社執行役員、2021年2月に同社CTOに就任。

KLab TechBlog
・株式会社f4samurai
CTO
松野 洋希
大手シンクタンクにてテクニカルエンジニアとして社内外の技術支援を担当。 2010年、会社の同期3人でf4samuraiを創業。 現在はCTO兼CHROとして、採用・育成等に従事。


まつのnote

・株式会社WFS

VP of Engineering
紙谷 憲
半導体メーカー、ITベンチャーを経て、2013年にグリー入社
入社後はWright Flyer Studiosの立ち上げに参画し、課金・認証基盤の設計・開発・運用に従事、その後CS・QAなど管理系部門のマネジメントや海外展開の推進などを担当し、2019年1月より現職。

WFS BLOG

KLab株式会社
http://www.klab.com/jp/

会社情報

会社名
KLab株式会社
設立
2000年8月
代表者
代表取締役社長CEO 森田 英克/代表取締役副会長 五十嵐 洋介
決算期
12月
直近業績
売上高107億1700万円、営業損益11億2700万円の赤字、経常損益7億6100万円の赤字、最終損益17億2800万円の赤字(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3656
企業データを見る
株式会社WFS
https://www.wfs.games/

会社情報

会社名
株式会社WFS
設立
2014年2月
代表者
代表取締役社長 柳原 陽太
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