Japan Contents Blockchain Initiative、「NFTについての考え方」を策定…ルール未整備や権利侵害、投機対象となっている現状に懸念、今後の取組も表明

博報堂、電通、エイベックス関係会社、小学館関係会社ほか15社が加入する日本のコンテンツ企業連合で運営するブロックチェーンコンソーシアム「Japan Contents Blockchain Initiative」(ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアティブ。略称「JCBI」)は、NFTを通じたコンテンツ流通の円滑化、活性化等のために、コンテンツに関わる企業や官公庁が参加する著作権流通部会において、以下の「コンテンツを対象とするNFT(Content-NFT)についての考え方」を策定した。

「考え方」では、現状のNFTについて、 法制度や業界ルール等が未整備で、無権限者による発行などコンテンツに関する権利侵害も行われていることや、投機目的での取引を含めて消費者被害が生じることへの懸念を表明した。適切なガバナンスのもと、推進するための団体としての取り組みも表明した。


 
コンテンツを対象とするNFT(Content-NFT)についての考え方
 
2021年6月1日
Japan Contents Blockchain Initiative
著作権流通部会


1. はじめに
当団体は、 日本のメディア・コンテンツ業界のDX化を業界横断的に加速することを目的として設立された企業連合コンソーシアムであり、 ブロックチェーンを利用したコンテンツ流通の円滑化、 活性化等を命題の1つとしている。

昨今、 ブロックチェーン技術を利用したNFTの取扱いが世界的に拡大している。 また、 その拡大には、 同じくブロックチェーン技術を利用した暗号資産が大きく影響している。 しかしながら、 財産的価値に関する電子的記録である「暗号資産」と、 コンテンツその他の情報に関する電子的記録である「NFT」とは、 対象、 目的等が異なる。 当団体は、 暗号資産とNFTは、 共にブロックチェーン技術を利用しているものの、 両者を区別して取扱うのが適切と考えている。

当団体は、 NFTは、 コンテンツ流通の円滑化、 活性化等に寄与する重要な技術の1つであり、 そのためには、 適切なルールその他の取引環境の整備が有益と考えている。 本書は、 コンテンツを対象とするNFTに関する、 現時点における、 当団体の基本的な考え方を示すものである。

なお、 本書では、 NFTを、 単なる「NFT」ではなく、 敢えて「コンテンツを対象とするNFT」(Content-NFT。 略称「C-NFT」)と表記している。 NFT(Non-Fungible Token)とは、 非代替的な電子的記録であり、 その語句上は、 「ブロックチェーン上で記録される電子情報が非代替的であること」を意味するに過ぎない。 NFTに係るルールを整備する上では、 ブロックチェーン上での電子的記録の対象(本書ではコンテンツ)を明示することが有益と考えている。


2. C-NFTの定義
当団体は、 「C-NFT」を、 以下のように定義する。

C-NFT
コンテンツを対象とするNFT(Non-Fungible Token)であって、 発行者、 購入者等とのコンテンツに関する権利その他の契約関係、 その後の移転情報等を、 ブロックチェーン上に電子情報として記録したもの(電子的記録)

ここでのコンテンツとは、 テキスト、 画像、 映像、 音楽、 アート、 デザインなどのコンテンツを総称したものであり、 知的財産である著作物、 商標、 意匠等を含む概念である。

なお、 C-NFTは、 その電子的記録として、 コンテンツに関する権利その他の契約関係を主たる対象とするものであり、 仮想通貨(暗号資産)とは異なり、 それ自体が通貨類似の決済手段等の経済的機能を有するものではない。


3. C-NFTの法的位置づけ
当団体は、 C-NFTを、 コンテンツに関する権利その他の契約関係の電子的記録と捉えており、 この理解に基づけば、 C-NFTを保有することは、 必ずしも、 対象コンテンツに関する著作権その他の知的財産権を保有することを意味しない。 当団体は、 C-NFTそれ自体は、 所有権の対象とはならないと考えており、 また、 定義上も、 仮想通貨(暗号資産)とは異なるものと考えている。

もっとも、 当団体は、 C-NFTに関する関係当事者間の合意等により、 民法、 知的財産法その他の法的枠組みの範囲内において、 対象コンテンツに関する著作権その他の知的財産権の譲渡、 許諾等が行われることを否定するものではない。

また、 当団体は、 決済手段等の経済的機能を有するC-NFTについてまで、 暗号資産の該当性を否定するものではなく、 C-NFTの機能、 利用方法等によっては、 金融商品取引法、 資金決済法その他の金融規制が及び得ることを否定するものでもない。


4. 現状への懸念
NFTについては、 法制度、 業界ルール等が未整備であり、 無権限者による発行など、 コンテンツに関する権利侵害も行われている。 また、 投機目的での取引を含め、 購入者等における消費者被害が生じる懸念もある。

コンテンツには、 創作者のほか、 法人及び個人を含め、 様々な利害関係者、 利用者等が存在しており、 コンテンツの適切な流通を図る上では、 創作者、 利害関係者、 利用者等の保護も必要となる。

当団体は、 C-NFTの流通促進という観点からは、 パブリック型ブロックチェーン(特定の管理者が存在せず、 不特定多数者が参加するブロックチェーン)も有益と考えている。 しかし、 ガバナンス機能が欠如しやすく、 当団体としては、 その結果として、 権利侵害、 消費者被害等が発生又は拡大する事態を懸念している。


5. 当団体の取組み
当団体は、 コンテンツ企業が共同でコンソーシアム型ブロックチェーン(複数の管理者が存在し、 特定複数者が参加するブロックチェーン)を運用し、 C-NFTが適切なガバナンスのもとで発行・流通されることが、 コンテンツ産業の適切な発展に資すると考えている。 その一環として、 当団体では、 当団体のコンソーシアム型ブロックチェーンにおいて発行・流通されるC-NFTについて、 以下の要件の実装に向けた取組みを推進する。

1.    C-NFTの発行者が、 対象コンテンツに関する正当な権利者であること
2.    C-NFTの対象コンテンツが、 適法に作成されたものであること
3.    上記に反するC-NFTが認識された場合には、 その発行、 取引等を制限すること
4.    C-NFTが移転可能な場合には、 パブリック型ブロックチェーンへの移転を含め、 移転履歴の追跡及び検証を可能とすること
5.    第三者によるC-NFTの対象コンテンツの不正利用の検知に努めること

なお、 当団体は、 今後のC-NFTその他のブロックチェーン技術の発展、 市場や法制度の動向等を踏まえ、 また、 政府関係者(内閣府知的財産戦略推進事務局、 経済産業省コンテンツ産業課、 文化庁著作権課等)との意見交換も通じて、 必要に応じて本書の「考え方」を適宜更新していく方針である。

 
以上