新型コロナはアニメや音楽のトレンドにどんなインパクトを与えたのか?  ブシロード木谷会長インタビュー

木村英彦 編集長
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2020年に世界的に広がった新型コロナウイルスの感染拡大は、それまでの価値観や常識、文化を大きく変えるものとなったが、エンタメコンテンツにはどういったインパクトがあったのか。「BanG Dream!(バンドリ!)」プロジェクト制作総指揮の木谷高明氏(株式会社ブシロード代表取締役会長)にヒットタイトルの変化についての見解を聞いた。


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――:よろしくお願いいたします。『鬼滅の刃』が爆発的にヒットしましたが、新型コロナがアニメのトレンドにどういった影響があったとお考えですか。

ヒットするアニメや漫画などの作品をみていくと、やはり時代性が反映されていると感じています。新型コロナで先行き不安定となるなか、好まれる作品の傾向が変わりました。この1年でヒットした作品を見ていると、よく言われるように、「異世界もの」や「ダークな世界観」の作品が強かったと感じますね。


――:わかります。ある種の現実逃避であったり、不幸な境遇のキャラと重ね合わせて共感したり、といった感覚があるんでしょうか。

そういう部分は多分にあるだろうと思います。逆に、皆でワイワイ楽しくやろうという作品や、目標に向かって頑張ろうという作品はいまひとつだったんです。逆に頑張らなくてもいいという作品の方が受けているかもしれませんね。


――:そのあたりは、新型コロナの影響が落ち着き、将来展望が見えてくると変わるんでしょうか。

新型コロナが収束して、すぐにパッと変わるわけではないでしょうが、そうなると期待しています。これとは少し視点が違うんですけど、当たる作品の仕組みも変わってきています。例えば、アニメを見るのであれば、これまではテレビなどの番組表を見て、その時間になったら、テレビをつけてアニメを視聴したり、それが難しい場合は録画したりして楽しんでいました。

いまは10-20代を中心にテレビでアニメを視聴する人がだいぶ減っていて、配信サイトで視聴されている方がかなりの割合を占めています。配信サイトでアニメを視聴する際、特にこだわりがない場合はサイトの上の方に並んでいる作品から選ぶことになると思います。アニメの再生リストの多くは、再生数順に並んでいることが多いんです。

配信開始から一定の再生数の稼げる作品であれば、再生リストの上の方に表示されて、お客様の目に止まりやすい状況が作りやすくなります。つまり、何が言いたいかというと、放送開始前から一定のファンを持つ、”基礎票”のあるタイトルが有利になりやすい、ということです。

放送前から“基礎票”を持っている作品でいうと、例えば人気マンガ誌からのアニメがそのひとつです。そのため、再生リストのファーストビューに初期から入りやすく、多くの人の目につきやすいんです。そして、それによって再生回数がさらに伸びるという良い循環が生まれやすくなっています。

これはもちろん、人気マンガの作品に限ったことではなく、一定のファンを持つライトノベル、第2期、第3期と続く人気作品にもいえることかもしれないですね。これがこの1年で一番変わったことかもしれません。



――:シリーズものというと、2期、3期と新規ファンが入りづらくなるため、どうしても漸減が避けられないイメージでしたが、違ってくるということですね。作品としては幅の広さも必要になるんでしょうか。

いろいろな人に見てもらえるようにするには、作品としての幅の広さも少しは必要になるんですが、配信サイトにわざわざ登録してアニメを視聴するような人は、熱心なアニメファンですから、そこまでの広さは求められないと思います。とにかくアニメ作品リストの一番上にあることが大事なんです。逆にいうと、何もないところから立ち上げる、オリジナル作品は厳しいです。この流れはしばらく変わらないでしょうね。


――:例をあげるまでもなく、人気マンガ作品はこれまで以上に支持をされていますね。これからもその流れは続きそうだと。

はい。ただ、オリジナル作品であってもお客様から支持を集めることは不可能ではないと考えています。カギになってくるのは、アナログの展開だろうと思います。ライブや舞台公演などの展開が大事になるんです。新型コロナの影響で、ライブや舞台公演の威力が大きく落ちてしまっている状況ですが、普段どおりでなくてもきちんと開催できるようになれば景色が変わってくるだろうと思います。


――:ライブと言えば、音楽などの動向には変化があったんでしょうか。

先日、他社のある音楽プロデューサーから「2018年のアニサマの中打ちで、これからアコースティックの時代が来ると力説されていましたが、木谷さんの言ったとおりになりましたね」と言われました。私もそこまで詳しくは知らないのですが、TikTokなどでもアコースティックが非常に受けているんだそうです。

アコースティックが受けていることを少し分析すると、実は、歌がうまく歌えないと駄目だということです。世界的に歌が上手な人が支持されるのは、オンラインライブの影響があります。オンラインライブというのは、歌がうまくないと盛り上がらない。

ライブ会場では、他のお客さんと一緒にいますので、そこで生み出される雰囲気や、充実した音響設備もあって、盛り上げることができます。しかし、オンラインライブでは1人で冷静に見ているため、より歌唱力に対してシビアになる。動画配信サイトで「本物」を見る機会が増えてきて、視聴者の目が肥えてきている部分も大きいといえます。

最初は未熟だった人が徐々にうまくなっていくのもいいんですが、最初から上手な人が支持される時代になっています。いまはギターが1本あれば、自宅で弾いたものを収録して簡単にYouTubeにアップすることができます。歌のすごく上手な人が世の中にあふれています。

例えば、「Poppin'Party」は、トークを交えつつ、6~7曲のアコースティックライブを昨年やりたかったのですが、新型コロナの影響もあって実現できませんでした。アコースティックライブは、彼女たちの新しい魅力が引き出してくれるはずです。

また、「RAISE A SUILEN」は、純粋にバンドとして海外から評価を集めるほどの実力を持っていますから、真っ向勝負で挑んでほしいですね。「Roselia」はキャラクターと世界観を一層引き立たせつつ、世間にアピールしたいですね。



――:ありがとうございました。


 
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会社情報

会社名
株式会社ブシロード
設立
2007年5月
代表者
代表取締役社長 木谷 高明
決算期
6月
直近業績
売上高487億9900万円、営業利益33億8500万円、経常利益45億300万円、最終利益20億5000万円(2023年6月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
7803
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