大手ゲーム6社、20年3月期決算は6社中4社が増益 セガサミー復調、カプコンとコーエーテクモ最高益 バンナムは10年間で4.8倍の規模に

家庭用ゲームソフト大手6社の2020年3月通期の決算が出揃った。本業の儲けを示す営業利益が前の期に比べてプラスとなったのは、6社中4社だった。カプコン<9697>やコーエーテクモホールディングス<3635>、セガサミーホールディングス<6460>、スクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>が増益となった一方で、バンダイナムコホールディングス<7832>、コナミホールディングス<9766>が減益となった(以下、社名は略称とする)。

各社の収益状況は以下のとおり。

 


増益組をみていくと、最も目立ったのは、セガサミーHDだ。オンライン・スマホゲームが黒字転換したほか、パチスロ遊技機の販売が伸び、営業利益は111%増となった。大型のパッケージゲームとIP許諾によるロイヤリティ収入が大きく伸長したコーエーテクモHDと、アミューズメント機器が黒字転換したカプコンが最高益を更新した。スクエニHDはスマホゲームとMMOゲーム、「マンガUP!」を中心とする出版事業が好調だった。

減益組をみると、バンナムHDは主力の玩具が好調だったものの、もう一つの柱であるゲーム、そして映像音楽、アミューズメントが苦戦し、減益での着地となった。コナミHDは、拠点の移転費用が発生したことに加え、スポーツ事業での減損と先行投資などが重荷となり、大幅な減益となった。


 
過去10年の振り返り

今回、6社の過去10年の振り返りも行ってみよう。2011年3月期以来の各社の営業利益の推移を示したのが以下のグラフだ。目につくのは、バンナムHDの成長ぶりだろう。2011年3月期の時点で、163億円の営業利益だったが、2020年3月期は4.8倍に拡大した。高い成長を達成し、他の5社を大きく引き離した。

高い成長を見せたのは、スクエニHDとコーエーテクモHDで、スクエニHDは73億円から327億円と4.5倍、コーエーテクモHDも33億円から141億円と4.3倍と大きく伸びた。カプコンも142億円から228億円と1.6倍、コナミHD207億円から309億円と1.5倍となった(※コナミHDは会計基準が変わっている)。

唯一、落ち込みが目立つのはセガサミーHDだ。10年前の営業利益は687億円とあり、他社を大きく引き離す水準だったが、その後、遊技機に対する規制の影響などもあって、営業利益を落とした。ただし、直近では持ち直しの動きを見せている。

もう一つ大きな特徴として、カプコンとコーエーテクモの安定性も見逃せない。コンテンツ業界の企業に見られる、ヒットタイトルの有無によって、業績が大きく上下に変動するといったことはなく、安定的に推移していることが確認できるだろう。

 


 
各社の状況

■コーエーテクモホールディングス<3635>
売上高426億円(前の期比9.4%増)、営業利益141億円(同16.6%増)だった。ゲーム事業が牽引した。IPを許諾したスマートフォンゲーム 『三国志・?略版』が好調に推移したほか、『無双OROCHI3 Ultimate』や『仁王2』などを発売した。『ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~』のリピート販売が伸長した。アミューズメントと不動産は振るわなかった。

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■セガサミーホールディングス<6460>
売上高3665億円(前の期比10.5%増)、営業利益276億円(同2.1倍)だった。「パチスロ北斗の拳 天昇」などを販売し、パチスロ機器の販売台数は倍増。また家庭用ゲームが減益だったが、オンラインゲームが黒字転換。『PSO2』と『北斗の拳LEGENDS ReVIVE』『D×2 真・女神転生リベレーション』など堅調だったことに加え、タイトル譲渡に伴う一時収益の計上、前の期の減損処理に伴う費用減が主な要因だった。

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■バンダイナムコホールディングス<7832>
売上高7239億8900万円(前の期比1.1%減)、営業利益757億7500万円(同6.3%減)だった。国内外の大人層に向けた商品が人気だったトイホビー事業が好調だったが、ゲームと映像音楽、アミューズメントが軒並み苦戦した。スマホゲームは、「DRAGON BALL」シリーズや「ワンピース」、国内の「アイドルマスター」シリーズなど主力が安定的に推移した。四半期別の売上を見ると、3年ほど500億円前後で安定した推移となっている。

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■スクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>は
売上高2605億円(前の期比4.0%減)、営業利益327億円(同33.0%増)と減収増益だった。家庭用ゲームは前の期に大型タイトルが発売された反動減があったものの、『ロマンシング サガ リ・ユニバース』や『ドラゴンクエストウォーク』などスマホゲームと、『ファイナルファンタジーXIV』と『ドラゴンクエストX』のMMOゲームが好調だった。出版事業も大きく伸びた。「マンガUP!」や電子書籍、紙媒体の販売が大きく成長した。

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■カプコン<9697>
売上高815億円(前の期比18.4%減)、営業利益228億円(同25.8%増)と最高益を更新。前の期に26億円の営業赤字だったアミューズメント機器が20億円の黒字と大きく貢献。「新鬼武者 DAWN OF DREAMS」が好調だった。ゲーム事業はダウンロード販売を伸ばしたことで減収だったが、「モンスターハンターワールド:アイスボーン」のヒットに加え、リピートタイトルで利幅が大きいデジタル販売比率の向上が利益を押し上げた。

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■コナミホールディングス<9766>
売上高2628億円(前の期比0.1%増)、営業利益309億円(同38.7%減)と減益だった。拠点移転に伴い、退去後家賃等を一時費用として計上したほか、スポーツ事業の固定資産の減損損失と新技術の先行投資などで減益となった。モバイルゲームは『プロ野球スピリッツA』や『eFootball ウイニングイレブン 2020』(海外名『eFootball PES 2020』)、『遊戯王 デュエルリンクス』が好調だったという。

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(編集部 木村英彦)
株式会社カプコン
http://www.capcom.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社カプコン
設立
1983年6月
代表者
代表取締役社長 最高執行責任者 (COO) 辻本 春弘
決算期
3月
直近業績
売上高1259億3000万円、営業利益508億1200万円、経常利益513億6900万円、最終利益367億3700万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
9697
企業データを見る
株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス
https://www.hd.square-enix.com/jpn/

会社情報

会社名
株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス
設立
1975年9月
代表者
代表取締役社長 桐生 隆司
決算期
3月
直近業績
売上高3432億6700万円、営業利益443億3100万円、経常利益547億0900万円、最終利益492億6400万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
9684
企業データを見る
コナミグループ株式会社
http://www.konami.com/

会社情報

会社名
コナミグループ株式会社
設立
1973年3月
代表者
代表取締役会長 上月 景正/代表取締役社長 東尾 公彦
決算期
3月
直近業績
売上高3143億2100万円、営業利益461億8500万円、最終利益348億9500万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム(ロンドン証券取引所にも上場)
証券コード
9766
企業データを見る
コーエーテクモホールディングス株式会社
http://www.koeitecmo.co.jp/

会社情報

会社名
コーエーテクモホールディングス株式会社
設立
2009年4月
代表者
代表取締役会長 襟川 恵子/代表取締役社長 襟川 陽一
決算期
3月
直近業績
売上高784億1700万円、・営業利益391億3300万円、経常利益398億9900万円、最終利益309億3500万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3635
企業データを見る
株式会社バンダイナムコホールディングス
http://www.bandainamco.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社バンダイナムコホールディングス
設立
2005年9月
代表者
代表取締役社長 川口 勝
決算期
3月
直近業績
売上高9900億8900万円、営業利益1164億7200万円、経常利益1280億0600万円、最終利益903億4500万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
7832
企業データを見る
セガサミーホールディングス株式会社
http://www.segasammy.co.jp

会社情報

会社名
セガサミーホールディングス株式会社
設立
2004年10月
代表者
代表取締役会長 里見 治/代表取締役社長 グループCEO 里見 治紀
決算期
3月
直近業績
売上高3896億3500万円、営業利益467億8900万円、経常利益494億7300万円、最終利益459億3800万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
6460
企業データを見る