2020年 年頭所感(株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス 松田 洋祐社長)

株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス
代表取締役社長 松田 洋祐
 

謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。

2019年のデジタルエンタテインメント業界は、SIEのPlayStation 5やMicrosoftのXbox Series Xといった次世代ゲームコンソールの発表に加えて、GoogleのStadiaやMicrosoftのProject xCloud、NVIDIAのGeForce NOW等のクラウドサービスが開始するなど、クラウドストリーミングサービスがいよいよ本格化しました。これらの新たなプラットフォームの登場により、これからのコンテンツプラットフォームの在り方や、プラットフォーム間の競争の在り方が大きく変わる可能性が出てきました。スマートフォンも機能面での新規性が失われ、ゲームデバイスとしての成熟度が増す中、ARグラス等の新しいデバイスの出現への期待が高まっています。
 

新しい時代におけるゲーム体験の在り方
日本国内のモバイルゲーム市場は、拡大を続けているとはいえ、その成長率は鈍化しています。タイトルの上位固定化が目立つ一方、新しい体験を提供するタイトルが大いにシェアを伸ばすなど、各企業の優勝劣敗が顕著になった一年でした。これからは、今まで以上に他とは違う斬新な何か 「Something Else」 が求められ、それを実現できる企業こそが生き残る時代になってゆきます。また、HDゲームの分野においても、クラウドゲームの時代の到来とともに、ゲーム自体がさらにサービス化してゆくことが予想されます。一方向的なゲーム体験から他のユーザーや、ゲーム視聴者とのインタラクションなど、ゲーム体験の在り方がどんどん変化してゆくでしょう。


5Gの時代の到来にあたって本格化するクラウドゲーミング
このような変化の中にあって、当社は、次世代ゲームコンソール向けのタイトル開発を着実に行うだけでなく、5G時代の到来にあたって本格化するであろうクラウドゲーミングへの対応も積極的に進めてゆきます。ストリーミングという新たなディストリビューションプラットフォームの出現は、従来のディスク販売モデルからデジタル販売への流れを一層加速させるだけではなく、サブスクリプションモデルの採用など、ビジネスモデル自体を大きく変化させる可能性を秘めています。特に、従来のゲームコンソールが十分普及していないインドや南米といった成長地域においては、通信インフラの改善とともに、従来のゲームコンソールやPCを必要とする環境を飛び越し、直接ゲームプレイ環境をユーザーに提供するクラウドストリーミングは、市場を広げる大きな可能性があると期待しています。また、ゲーム開発面においても、クラウド環境ならではのゲーム体験の追求、つまりクラウドネイティブ/クラウドセントリックなゲームの開発を行う必要があります。クラウドゲーミングの本格的な普及のためには、ディストリビューション面のみならず、ゲーム体験においても革新性が求められます。従来のゲームコンソールでは体験できない、新しいゲーム体験がクラウドゲーミングの普及を大きく後押しするものと考えています。当社では、すでにクラウドネイティブ・クラウドセントリックなタイトルの開発に取り掛かっており、新しいゲーム体験を追求してゆきます。もちろん、超えるべき技術的ハードルや、通信コストの問題など課題が山積している状況ではありますが、5G時代を迎えるこれからの5年において、クラウドゲーミングは大きなトレンドであり、いかに柔軟に対応するかが重要な戦略になるのは間違いありません。当社としてもこの新たな流れを的確にとらえて新たな成長の糧としてゆきます。


テクノロジーによる新しいエンタテインメントの創造
世の中のIoTの進展を踏まえて、ゲーム開発で培った様々なテクノロジーを活用した新しいエンタテインメントの創造に、積極的に投資してゆきたいと考えています。特にAIに関して、ゲームの枠を超えて、より広いエンタテインメントAIの追求を行うべく、様々な取り組みを進めてゆきます。

さらに、ARグラス等の新たなデバイスの登場が期待される中、従来より取り組んでいるXR等の研究開発も継続しており、今年以降当社のいくつかのプロジェクトにおいて成果を披露できるものと考えています。また、ブロックチェーンを活用したゲームも黎明期から脱し、徐々にその存在感を増しています。ブロックチェーン活用ゲームを投機の対象とせず、ユーザーのゲーム体験に新しい何かをもたらすことができるかが成長のカギであると考えています。

2020年は、デジタルエンタテインメント業界にとって、次の世代に向けての大きな変化の年になります。この変化を好機ととらえて様々な挑戦を行ってゆきますので、ご期待ください。

本年もよろしくお願い申し上げます。
株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス
https://www.hd.square-enix.com/jpn/

会社情報

会社名
株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス
設立
1975年9月
代表者
代表取締役社長 桐生 隆司
決算期
3月
直近業績
売上高3432億6700万円、営業利益443億3100万円、経常利益547億0900万円、最終利益492億6400万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
9684
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