舞台発のIP創出を目指すブシロード×劇団飛行船の資本業務提携 「新日買収のときと同じくらいの興奮」(木谷氏)



ブシロード<7803>は、この日(9月30日)、劇団飛行船との資本業務提携の記者発表会を東京都内で開催した。記者会見には、ブシロードより、木谷高明氏、相羽あいなさん、劇団飛行船より大場隆志社長が登壇し、今回の資本業務提携の概要とその狙いについて明かした。ブシロードは、劇団飛行船の発行済株式の14.5%を保有することになるが、木谷氏は、今後の展開次第では、100%子会社となる可能性もあるとした。

同社は、IPを軸にアニメ、ゲーム、音楽、イベント、MDなど事業展開を行うIPディベロッパー戦略を推進しており、近年立ち上げた舞台発となるオリジナルIP「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」を皮切りに、IPプロデュースにおける舞台を重要なコンテンツと位置づけている。

一方、劇団飛行船は舞台領域で 50 年以上にわたって上演を行ってきており、マスクプレイミュージカル(ぬいぐるみ舞台劇)の舞台表現技術は国内外で高い評価を受けている。また、2016 年の映劇との吸収合併により、2.5次元ミュージカルの分野にも力を入れている。

資本提携では、劇団飛行船の親会社であるソプラティコの株主である大場隆志氏よりソプラティコの14.5%持分を3335万円で取得する一方、業務提携では、舞台発IPやブシロードIPの舞台化の強化とともに、他社IPの舞台化の加速、舞台領域における新しい表現方法の検討を行う。

まず、木谷氏がブシロード側からの提携の背景について以下の要因があると説明した。
 


(1)ライブエンターテイメントの強化
現在、ブシロードでは、ライブエンターテイメントに力を入れているが、さらに注力するため、今回の提携を行うことにしたと語った。

(2)舞台ファンの熱量の高さとコアファンづくりのベース
コンテンツの発展を目指す場合、デジタルだけで行うことが最も速いものの、基礎を固めながら着実に発展させるにはライブが最も良いと説明した。ライブ、とりわけ舞台は、役者の熱量をダイレクトにファンに伝えることができ、逆にファンの熱量も役者に伝えることができる。舞台が高い熱量を持つコアなファンを作る手段、あるいはIPへの熱量を維持・膨らますための手段として有効と位置づけているという。「デジタル化が進めば進むほどアナログが価値を持つ」。

(3)デジタルコンテンツの制作費高騰
ゲームもアニメもコンテンツの制作費が高騰していることもあると述べた。木谷氏によると、アニメ1話分のコストでひとつの公演ができるほどだそうで、きちんと力を入れたアニメだと1クールで膨大なコストが掛かってしまう。新規IPを立ち上げる場合、いきなりアニメやゲームから始めるのはリスクが大きいというわけだ。コンテンツを立ち上げる場合、デジタルではなく、舞台というアナログを使って発展させていきたいという。
 


ではどういった提携の内容になるのか。

(1)舞台発IP/ブシロードIP舞台化の強化
デジタルコンテンツの制作費が高騰するなか、新規のIP立ち上げという観点だけでなく、IPの継続という観点からも舞台は有効と考えているという。

(2)他社IPの舞台化を加速
ブシロードのIPだけでなく、他社のIPに関しても舞台化を加速させていきたいと語った。デジタルコンテンツの制作費高騰という観点から他社からも注目を集めているという。

(3)舞台領域における新たな表現方法の創造
現在、舞台の表現については、デジタル技術を使うことで、進化を遂げている最中だが、今後もブシロードが協力することで新しい表現方法を検討していく。
 


続けて木谷氏は、舞台は一見すると地味だが、大きな可能性を持つ領域であると期待を示した。例えば、9日間舞台をやれば、毎日入場料収入や物販収入があるだけでなく、その後、映像配信やパッケージ販売などもあるため、「一粒で何度もおいしい」という。舞台については、新たなチャレンジを行う可能性がまだまだ多くある。

舞台発の成功事例として、「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」をあげた。「ミュージカル」と「アニメ」が相互にリンクし合い展開していく点に特徴があったが、同作は、まず、2回の舞台公演から始まり、アニメ、そして再度の舞台、ゲームと展開を行っていった。舞台をアニメ化することで膨らみ、ゲームやカード、音楽、グッズなどに展開された。ワンストップのメディアミックスだが、舞台から順序よく多面的に展開された。

これまでも舞台化されたIPは少なくないが、舞台からスタートした事例は非常に少なく、木谷氏としても「プロジェクトを始める際に勇気が必要だった」と振り返った。「二次元と三次元が行ったり来たりして、(両方が)重なるという確信がないとできない」。「なるべくアニメと役者の声質は似てほしいと考えているが、両方を完全に一致させたことも良かった」という。

「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」は、2.5次元業界における大きな功績として、これまでの公演で男性を中心に1万3000人以上を動員することに成功したことだろう。「男性は舞台や演劇を鑑賞しない」という「常識」を覆した作品でもあった。記者も取材で2.5次元の業界関係者から「2.5次元は女性向けのみでしか成り立たない」といった声を何度か聞いたことがある。木谷氏は「今後も同じように常識を覆していきたい」と語った。
 


なお、具体的な企画に関しては話し合っている最中とのこと。そして、「無理やり融合することも考えていない」という。劇団飛行船の仕事を尊重し、現在やっていることについて、ブシロードが協力することで伸ばせるものがあるはず、とした。また、劇団飛行船の舞台ノウハウもブシロード側のコンテンツに活かせるとの見方を示した。

続いて、劇団飛行船より大場社長が登壇した。大場氏が劇団飛行船の社長に就任したのは、経営危機にあった4年前だったという。周囲からは心配する声が多かったというものの、現場の演者やスタッフの熱い情熱に触れることで、復活させることが可能だと確信したという。「演劇に関わっている人たちに熱い情熱があった。人生の使命であるかのごとく働いていた」。
 


マスクミュージカルに加えて、2.5次元なども展開し、経営を立て直し、過去52年間で最高の営業利益率を達成。そして、その後の展開を考えている際、木谷氏と運命的な出会いがあったと明かした。ブシロードのIPと劇団飛行船のIPと技術・ノウハウを組み合わせ、新しい演劇やミュージカルを作り上げ、「全く興味のない人にも観たいと思わせるものにしたい」と述べた。

相羽さんは、歴史ある劇団飛行船とブシロードの提携でどんな化学反応が生まれるのか楽しみと述べつつ、個人として「ぬいぐるみの中に入って演じてみたい」と話した。声優自らがぬいぐるみに入って演じるのは、表現手法として新しく、そして面白いのでは、と提案した。これを受けて、木谷氏も声だけを当てるのではなく、自ら演じるケースは非常に少ないとし、「面白い」と応じた。
 

最後に、木谷氏は、新日本プロレス買収のときと同じくらいの興奮を覚えていると明かした。新日本プロレスは、ブシロードのグループ会社になった後、飛躍的に発展したことは記憶に新しい。今回の提携の内容やその効果については外部からはまだまだ見えづらいものがあるが、ブシロードにおいては、これと同じくらいのインパクトを持つ提携と位置づけられるようだ。そして、今後の展開次第で劇団飛行船の株式を追加取得し、100%保有する可能性があるともコメントした。

ブシロードも大きな期待をかける今回の資本業務提携。相羽さんの話すように、両社の化学反応でどういった作品が生まれてくるのか、大いに期待したい。
株式会社ブシロード
http://bushiroad.com/
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会社情報

会社名
株式会社ブシロード
設立
2007年5月
代表者
代表取締役社長 木谷 高明
決算期
6月
直近業績
売上高487億9900万円、営業利益33億8500万円、経常利益45億300万円、最終利益20億5000万円(2023年6月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
7803
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