【セミナー】ディライトワークスインディーズが『タイニーメタル』を支援した理由とは?…インディーズゲームの目利きポイントを紹介!


ディライトワークスは、7月12日、同社内にて「肉会(MEAT MEETUP)Vol.13プロデューサーの目利きのコツ教えます?! ~ディライトワークスインディーズ編~」を開催した。
 
「肉会(MEAT MEETUP)」は、ディライトワークスでの仕事に興味を持った人に参加してもらい、情報交換や交流、キャリアの相談を行えるイベント。
 
13回目となる本講演では、ディライトワークスのプロデューサーやアシスタントプロデューサーが登壇。『タイニーメタル 虚構の帝国』(以下、『タイニーメタル』)での事例を筆頭に、実例を交えながらディライトワークスインディーズ(以下、DWインディーズ)に関する業務の内容や、インディーズゲームメーカーのゲーム制作を支援する上で重視しているポイントについて語られた。本稿では、セミナーの内容についてレポートをお届けする。
 
【登壇者】
ディライトワークス・プロデューサー
岡村光氏

2004年にアートゥーン(現在はマーベラス)に入社。アーティスト、アートリードとして『ブルードラゴン』『ラストストーリー』を担当後、プロデューサーとして『ソウル・サクリファイス シリーズ』等に携わる。2018年にディライトワークスに入社。現在は第3制作部のプロデューサーとしてDWインディーズを含む複数のタイトルを開発中。
 
ディライトワークス・プロデューサー
林真理氏

多摩美術大学を卒業後、ポリゴンマジックに3DCGデザイナーとして新卒入社。その後エイベックス・ピクチャーズのゲーム事業推進室に移り、同社シニアプロデューサーとしてアニメIPをゲーム化する仕事に従事。現在はディライトワークスの第3制作部でプロデューサーを務める。
 
ディライトワークス・アシスタントプロデューサー
齋藤晃氏

2013年に株式会社エイタロウソフトに入社し、プランナー、ディレクターを経験。2017年に派遣会社より既存タイトルのPMとしてディライトワークス株式会社へ派遣となる。2018年に既存タイトルのアシスタントプロデューサーとして入社後、現在は第3制作部にて、新規タイトル開発に従事。
 

■インディーズゲームを支援する上で、「大切にしている3つの目利きポイント」とは?

 
DWインディーズとは、インディーズゲームメーカーの制作するゲームタイトルを開発段階からマーケティング、販売までを一貫してサポートするレーベルのこと。7月11日にパブリッシング第1弾となる『タイニーメタル』を配信し、話題を呼んだ。
 

 
林氏はDWインディーズの実際の業務について、一番大きい割合を占めているのは「共同開発」だと説明。クリエイターへの呼びかけからスタートし、企画の立案はもちろん、プロット段階からの開発を協力する企画もあるという。
 

 
他にも、DWインディーズはCS(※註1)・QA(※註2)や、海外パブリッシングのサポートも支援する。将来はグッズ展開のサポートも視野に入れ、ゲームファンや開発会社に需要がある支援内容を探していきたいと展望を語った。
 
※註1:Customer Supportの略。問い合わせ対応などを行うことを指す。
※註2:Quality Assuranceの略。作品の品質全体を保証すること。
 
また、林氏は支援するインディーゲームを決定する際の「大切にしている3つの目利きポイント」として、「オリジナリティ」・「ターゲット」・「サクセス」を挙げた。
 

 
インディーズゲームを支援するにあたり、ありきたりなゲームではなく、しっかりとした熱意が感じられる作品を選んでいるという林氏。開発側がターゲット層を明確にしていることはもちろん、ゲームクリエイターとして成功することに自信を持っているかどうかも重要視しているとまとめた。
 
続いて、パブリッシング第1弾として配信が開始されたばかりの『タイニーメタル』についての話題に。高い戦略性を持つ本作について、林氏はウォーシミュレーションファンに支持されるゲームになると考えたという。開発者側が“どのファン層に作品を届けたいか”というビジョンを明確に持っていたことが、開発を支援する大きなポイントになったことを明かした。
 

 
『タイニーメタル』に続き、DWインディーズ第2弾・第3弾の存在について岡村氏が言及。第2弾「PROJECT A」(仮称)は、デジタルとアナログを組み合わせた新しい遊びを提供する作品になるという。岡村氏は「より多くのゲームファンに届けるため、どのようなエッセンスを足すべきか思案を続けている」とコメントした。
 

 
第3弾「PROJECT B」(仮称)について、デザインや新しい技術を用いた、クリエイティブ面に目を付けたという岡村氏。開発会社のアート性と、DWインディーズが持つゲーム開発のノウハウを融合させる形で開発を進めていると話した。


 

■インディーズゲーム制作ならではの苦労が明かされる

 
講演中は、6月1・2日の2日間に渡り開催されたインディーゲームのイベント「BitSummit 7 Spirits」について振り返る場面も。
 
7回目となる同イベントだが往年と比べ、今年は若手のクリエイターが多く登場したと話す林氏。その理由として「Nintendo SwitchやPS4といったメジャープラットフォームによるインディーズに対しての支援が増え、作品を発表できる場面が増えたため」だと解説した。
 
齋藤氏はAAAと変わらないタイトルが多く登場していたと、視察時に感じた驚きを語る。インディーズへの期待感の高まりについて肌で感じられたと振り返った。
 

 
続いて、「インディーズプロデューサーと通常のプロデューサーの違いについて」というテーマが挙がる。
 

 
タイトルの規模は違えど、根幹の部分は共通しているという岡村氏。長年インディーズを支援している林氏も、「通常のプロデュース業務の方が規模感でいうと一ケタ大きいが、やっている内容に違いは感じない」と同意した。
 

 
講演後には、来場者からの質問に答えるQ&Aのコーナーも用意されていた。最初の質問は、『タイニーメタル』のプラットフォームに任天堂スイッチを選んだ理由について。
 
林氏は『タイニーメタル』を配信する時期と、Nintendo Switchがインディーズの支援に力を入れる時期とタイミングが合致していたと回答。PCゲーマーが多い海外に関しては『TINY METAL: FULL METAL RUMBLE』としてSTEAMでも販売するなど、開発元である「AREA35」としっかり打ち合わせを行っていたことを話した。
 

 
インディーズゲーム制作ならではの苦労について聞かれると、林氏は足並みの揃え方を挙げた。一例として、より良いゲームにしたいと次々にデバッグのフィードバックを行っても、小さな規模で開発を行っているインディーズゲームメーカーにとって負担になる場合もある。そういった実例を踏まえ、林氏は「会社に合わせたテンポ、進め方をしなければならない」と実感したことを打ち明けた。
 
トークセッション終了後の懇親会では、七夕や土用の丑の日をイメージした肉料理が登場。参加者たちはセミナーの感想を語り合うなど、最後まで充実した時間を過ごしていた。
 

 
 
次回のセミナーは、2019年8月23日(金)開催予定。「求む!0から作りたいボードゲームディレクター~アナログゲームユニットキャリア相談会~」というタイトルになっており、ボードゲームデザイナーやボードゲームファンにとって、たまらないセミナーになりそうだ。
 


 
(取材・文 ライター:島中一郎)

 
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企業サイト

 
ディライトワークス株式会社
https://delightworks.co.jp/

会社情報

会社名
ディライトワークス株式会社
設立
2014年1月
代表者
代表取締役 庄司 顕仁
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