【セミナー】メルカリ「フリマアプリ利用者における消費行動の変化に関する実態・意識調査の結果発表会」で明らかになった、フリマアプリから波及する周辺業界への影響


メルカリは7月31日、「フリマアプリ利用者における消費行動の変化に関する実態・意識調査の結果発表会」を開催した。

本調査は、全国のフリマアプリ利用者1,032名を対象に、フリマアプリ利用をきっかけに使用頻度が上がったサービスや意識の変化について、インターネット調査されたものである。発表された調査結果を基に、慶応義塾大学大学院経営管理研究科の山本晶准教授、ミニット・アジア・パシフィック株式会社代表取締役社長CEOの迫俊亮氏、株式会社メルカリ代表取締役社長兼COOの小泉文明氏、カルチャースタディーズ研究所社会デザイン研究者の三浦展氏がパネルディスカッションを行った。



本稿では、「フリマアプリ利用者における消費行動の変化に関する実態・意識調査」の結果発表内容と、パネルディスカッションの模様についてレポートする。なお、本稿で公開しているデータはすべてメルカリ調べによるものである。
 

●フリマアプリ利用前後の消費行動と意識の変化


最初に小泉氏が登壇し、開会の挨拶を行った。この中で小泉氏は「今回の調査は2回目です。1回目ではフリマアプリが消費についてどのような影響をもたらすのかという調査を行い、若者を中心に抵抗感がなくなってきているという結果を得ました。今回は周辺市場について、皆様に新しい変化が起きているということをご案内できればと思い、お集まりいただきました。私たち自身も今回のデータから新しく気が付くことがありました。ぜひ、ご理解いただきたいです」と本発表会の開催経緯を述べた。


▲メルカリ代表取締役社長兼COOの小泉氏。

次に山本准教授が登壇し、「フリマアプリ利用者における消費行動の変化に関する実態・意識調査」の結果発表を行った。


▲慶応義塾大学の山本准教授。マーケティング、消費者行動を専門としている。

今回の調査概要は下記の通り。

・調査時期:2018年7月6日(金)~7日(土)
・調査方法:インターネット調査
・調査対象:全国、20~59歳、男女1,032名(フリマアプリ利用者)


この調査をするにあたり最も関心があったのは、フリマアプリの登場により人々の消費行動は変わったのかということであったという。その疑問に対してどのような回答がもたらされたのか、調査結果を追っていこう。


▲「フリマアプリの登場により、あなたの消費行動や購買行動は変わりましたか?」という質問に、「はい」との回答が64.1%であった。

購買行動や消費行動の変化というのは、さまざまな側面を含んでいる。今回の調査範囲としている周辺サービスに限らず、「再販価格を意識してものを買うようになった」「ものを大切に扱うようになった」「タグを保管するようになった」「リペアのお店に詳しくなった」といった、消費行動の変化が見られる。

では、今回のテーマでもある周辺サービスの利用について、フリマアプリの登場でどう変化したのか。


▲「フリマアプリを利用するようになってから、利用頻度が増えたお店やサービスはありますか」という質問に寄せられた回答。


▲フリマアプリの利用前と利用後で、年間の各サービスの利用頻度を比較したデータ。縦軸が頻度(回数)。


▲同様のサービスについて、具体的な利用金額をフリマアプリ利用前後で比較したデータ。縦軸が金額(円)。

今回調査した各サービスについて、利用頻度が減ったもの、またはフリマアプリ使用前後で変化が現れないというものはなく、すべてにおいて利用頻度および利用金額が上昇しているという結果が得られた。

次に修理、手直しを行う「リペア」に注目した。フリマアプリへの出品を目的として、まだ使えるものを修理したいと考える人がどれくらいいるかの調査結果が下記の通りである。


▲「修理が必要だがまだ使えるものを、修理して出品したいと思いますか?」という質問への回答。42.5%もの人がリペアに前向きであることがわかる。


▲年代別に傾向があり、リペアをして出品をしたいと考える人は、特に20代に多いことがわかった。


▲フリマアプリ利用前後で、周辺サービスの利用頻度と金額がどれくらい変化したのかをまとめたデータ。

フリマアプリ利用前の、各サービスの平均利用頻度は約4.6回。フリマアプリを利用するようになると、各サービスの利用頻度は平均約6.0回。つまり、1.4回増えていることがわかる。利用頻度が増えるとともに利用金額も増加。新たな需要が創出されているということが明らかになった。

この数字を使って、フリマアプリというものが周辺サービスに対してどのような需要創出効果、経済効果があるのかということを推定したところ、下記のような結果が得られた。


▲フリマアプリの潜在的な経済効果は約752億円であるとされる。

今回の調査対象が20歳~59歳までなので、それ以外の年代については含まれていない。また、調査対象のサービスが限定されているため、今回の調査に漏れた他のサービスに影響が及んでいる可能性がある。あくまで、今回の調査報告をベースに計算した数字とのことである。

さて、今回の調査は前述の通り2回目のものである。前回は4月に「フリマアプリ利用者と非利用者の消費行動に関する意識調査」が実施されていた。山本准教授によると、マーケティングの教科書において消費者が購買する商品は、すべて新品であることを前提として書かれているという。ところが前回の調査からわかったのは、消費者が購買する商品は、新品はもちろんだが中古品に対しても積極的であるということだ。


▲前回調査から、フリマアプリによる消費行動の変化。

また、不要になったら売るという行動が普通になってきているので、商品というものは所有するのではなく、使いたいときにアクセスする、利用するものであるという傾向にあることが明らかになった。再販が前提となっているので、そのような消費者はタグや付属品を保管するようになったという、消費者行動の変化が起こっているのだ。

購買時の基準にも変化が見える。従来では「価格」「品質」を意識していたが、それに加えて「この服は仮にフリマアプリで売るとすると、いくらで売れるのだろうか」と、再販価格も含めて検討するようになったということが、前回調査で明らかになっていた。

今回の調査でわかったことは、想像以上の人が「修理」「リペア」「クリーニング」といったサービスを活用して出品していた、ということである。使用できなくなったら処分するというのがフリマアプリ登場前の消費活動であったとすると、使用できなくなったら修理して出品するという新たな行動が生まれつつあるといえる。


▲前回調査から、フリマアプリによる消費行動の変化。

ここで「使用価値」と「交換価値」という言葉が出てくる。一例として一般的に「水」は使用価値が高いけれども交換価値は低いもの。「ダイヤモンド」は使用価値は低いけれども交換価値は高いもの。リペアサービスは、これまでは自分の使用価値のためであったとすると、フリマアプリが登場した後は出品を念頭に置いているため交換価値という新しい価値が加わっていると考えられる。そのことが、利用金額の増大にも反映されている。つまり、これまでになかった新しい需要が創出されているといえるのだ。

中古品の購入価格については、購入時の価格から考えるというのが以前の形だとすると、安く購入し、リペア価格を考え、その合計金額で買うか買わないか決めるというような、新しい意思決定が生まれつつある。

最後に山本准教授から、今回の調査の「自由回答」で得られた回答の一部が紹介された。自由回答の中に「フリマアプリを検索のために使う」という回答が多く見られたという。つまり、何か欲しいものがあるときに、真っ先にフリマアプリを立ち上げて製品の価格を調べるというのだ。商品の価格は、検索エンジンや価格比較サイトで調べるというのがフリマアプリ登場前の姿であったとすると、現在はフリマアプリが商品の価格検索のためのツールとして役に立っているということが明らかになった。
 

●リペア市場への影響についてのパネルディスカッション


ここからは、本調査結果とリペア市場への影響を主題としたパネルディスカッションが行われた。


▲カルチャースタディーズ研究所デザイン研究者の三浦展氏(左)、慶応義塾大学大学院経営管理研究科の山本晶准教授(右)。


▲ミニット・アジア・パシフィック株式会社代表取締役社長CEOの迫俊亮氏(左)、株式会社メルカリ代表取締役社長兼COOの小泉文明氏(右)。

まずは、フリマアプリの他業界への影響について改めて山本准教授が「フリマアプリというものは単体で完結せず、出品されたものを誰かが購入すると梱包されて、配送店に運ばれ、荷物として送るものです。今回、周辺サービスにおける利用頻度と金額を調査しましたが、いずれも上昇していたということは当たり前といえば当たり前とも思います。ただ、これほどまで人々が修理をするようになったというのは発見でした」と語った。中には、リペア以上のカスタマイズを行った、ハンドメイドが得意になったという自由回答も見られたという。今回の調査では、こういった行動の変化が多く発見された。

オーディオがお好きだという三浦氏はやはり中古品の購入、修理の経験があるという。単にものを買って消費するというだけでは得られない「愛着」が加味されていくのではないかとした。

調査で見えてきた波及効果について小泉氏は「私の近しいところで聞いた話ですが、梱包資材を作っている会社様で取引高が1.5倍になったとか」と、フリマアプリの影響を感じることができたという。

迫氏が代表取締役社長CEOを務めるミニット・アジア・パシフィック株式会社は、靴やバッグを修理するショップ「MISTER MINIT」を全国に300店舗展開している。リペア市場の立場として迫氏は、「実際、フリマアプリに関連してお客様が増えたと感じたのは、ここ1年ほどのことだと思います。店頭に来るお客様が手にしているスマホに、すでにメルカリのアプリが起動しているんです。そして「この商品はこういうキズがついているが、これは直せますか?」「いくらかかりますか?」と、質問されます。それにお答えすると、「じゃあ買います。後日修理に来ますね」とおっしゃいます。店頭からヒアリングしていると、この1年でそういったケースがとても増えたということです」と、近年のリペアショップ店頭で見られるケースについて語った。

また、出品者によるリペアについても「MISTER MINIT」の店頭で見られるようになったという。特に顕著なのが、時計の持ち込み。使用せずに保管していた時計が、どうやらメルカリで売ることができそうだから修理して欲しい、と言って持ち込むケースだ。電池やストラップの交換を行い、より良い状態で出品することによって、少しでも高く売ろうとする動きが増えてきているという。

小泉氏が「「MISTER MINIT」に持って行ったら、一部を自分用にリメイクしてくれるというサービスはできないですか?」と提案すると、迫氏は「色の変更や、足に合っていない靴を履きやすくするサービスは可能です。実際、そのような理由で持ち込まれる方もいらっしゃいます」と、すでに修理だけではなく一部のカスタマイズが可能であるとした。さらに「何かあったら持ち込んでくれたら、何とかします」と力強く宣言し、三浦氏が「その職人魂がいいね」と称えていた。

最後に小泉氏が「誰かにとって価値が感じられなくなったものも、メルカリを通して価値がうまく移転していけば良いと思います。その移転の課程で、今回話題になったリペアのような市場があると、移転がよりスムーズにいくと思います。家の中にあるものの7割が非稼働であるといわれているので、フリマアプリなどを通じてもっともっと流通していけばいいと思います」と締めくくった。



 
(取材・文 ライター:岩崎ヒロコ)

(C)2018 Mercari
株式会社メルカリ
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会社情報

会社名
株式会社メルカリ
設立
2013年2月
代表者
代表取締役 CEO(社長) 山田 進太郎
決算期
6月
上場区分
東証プライム
証券コード
4385
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