【インタビュー】目標を7倍上回り1万人のDAU増加をもたらした『コトダマン』×『ミラティブ』コラボに迫る

木村英彦 編集長
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昨今ゲームアプリのマーケティングにおける「動画」の位置づけが急速に高まっている。動画配信については、YouTube Liveやニコ生が大きな地位を占める中、ライブ配信プラットフォーム「Mirrativ (ミラティブ)」が独自のポジションを築きつつある。

今回、ミラティブ代表取締役の赤川隼一氏(写真右)と、セガゲームスの『共闘ことばRPG コトダマン(以下、コトダマン)』の中村たいらプロデューサー(写真左)にインタビューを行い、ミラティブを使った取り組みとともに、他の動画配信との相違点や強み、マーケティング施策上の位置づけについて話を聞いた。



――:まず、『コトダマン』とミラティブの取り組みについておしえていただけますか。

中村氏:ミラティブさんとタイアップは、期間中のミラティブで配信された配信数×100アゲダマ(強化素材)を全ユーザーに配布するキャンペーンでした。昨今、動画配信が非常に盛り上がっていますが、特にミラティブさんは10代20代の方々が非常に多いと聞いていました。そういった方々にゲームを遊んでもらいたいと思い、タイアップをお願いしました。


――:アゲダマはどのくらい配布したのですか。

中村氏:配布したのは、22万アゲダマですね。つまり、期間中、配信が2200回あったということです。当初の想定は300回くらいで、「アゲダマは3万くらいの配布なら特に問題にならないだろう」と思っていました。はじめての体験ですので、上限を設定していなかったのですが、予想外に伸びて困ったのは事実です(笑) その結果、強化素材を余るほど配布することになりました。

で、その効果はというと、アゲダマを配布した日にDAU(日次アクティブユーザー数)が1万人増えました。これはちょっとした事件ですよね。したがって、想定を上回って配信が行われていることをポジティブに捉えて、今後も積極的に乗っかっていこうと思いました。

 



――:開始からどのくらいで目標値に到達したのですか。

赤川氏:初日です。すぐに想定の倍になりました。『コトダマン』のユーザーがいかにゲーム公式Twitterをチェックしているのか強く感じました。配信が一気に増えて、想定を超えるとニューワード(公式Twitterのキャラクター)が「ワシはクビじゃ」などとツイートするので、ユーザー間で共謀感や参加意識が醸成されて盛り上がりにつながったと思います。

中村氏:このまま進めていいのか、内心では迷いもありました(笑) それ以前からも公式Twitterにある種の「炎上芸」のようなものがあって、事件性のある出来事があると、ユーザーさんが盛り上げてくれる空気がありました。それなら、このままいこうと思いました。

赤川氏:あの盛り上がりは、『コトダマン』運営チームにコミットしていただけたことが大きいです。アプリ内に配信ボタンを設置すれば、動画配信が自然に増えていくと考える方が少なくないのですが、本当に大切なのは配信へのハードルをいかに取り除くかです。

配信を見ていると、最初はいわゆる「無言」が多かったんです。インセンティブ目的で恐る恐る…という様子でした。ニューワードに「声を出すのじゃ」とTweetしていただけて、「アイツがいうんだから仕方ない」という感じで、しゃべり始める人が増えました。

中村氏:それ以外には、『コトダマン』公式Twitterでは、ユーザーさんがボイス付きの配信を行っていたらRT(リツイート)したり、僕を含めた関係者が配信にお邪魔してコメントしたりするようにしましたね。

赤川氏:勇気を振り絞ってボイス付きの配信を行ったら、運営の人がきてくれてコメントや拡散してくれた、となればとても嬉しいでしょうね。

中村氏:『コトダマン』では運営方針として、ゲームだけで完結しないようにしています。数多くあるゲームのなかから選んでいただいているわけですから、長く付き合っていただくため、ゲーム以外の部分で面白さや事件性、お祭り性なども提供したいと思っていました。その意味で、ミラティブさんとはすごく相性が良かったですね。

 

▲炎天下の中、なぜか屋上で対談インタビューを行うことに。


――:全体としてはとてもうまく行った、ということですね。

中村氏:はい。今回のキャンペーンで、有名な配信者が生まれましたし、中には子供が生まれたと報告する方もいらっしゃいました。その人にとって特別なタイトルにしていきたいですね。やはりユーザー同士でコミュニティができあがると、長く遊んでいただけます。コミュニティづくりにプラスになっただけでなく、新規やDAUの増加にもつながりました。


――:どういうきっかけで今回の取り組みになったんでしょうか。

中村氏:以前からベンチマークとして注目していたタイトルがありまして、様々な運営施策やプロモーションを展開している中で、ミラティブさんとの取り組みを見ていたので興味を持っていました。

赤川氏:アプローチしたのは私からです。『コトダマン』は、βサービスのときから遊んでいましたし、ミラティブ上でもユーザさんが騒ぎ始めていたので、これはくると思っていました。知り合いにつないでいただき、お会いすることができました。


――:運営側では、ミラティブでは配信されているんですか。

中村氏:私やAPのナメカタが配信しています。1人のユーザーとしてゲームを遊んでいてガチャを引くんだったら、配信した方がいいだろうと思いました。で、やってみたのですが、ガチャの引きがすごく悪かったのですが(笑)、何百人という方に見に来ていただきました。現在は新規のガチャをやるときには配信しています。

赤川氏Pのガチャの引きが悪かったので、かえって公平感が出たのかもしれません。Pだからいい引きだろうと思っていたら、必ずしもそうでもなかったので(笑) また、中村さんが配信している際、うっかり個人的な話題が出てしまって、それによって親しみを感じた方も多いと思います。

中村氏:あのときはやってしまいました(笑) これからは気軽に配信できるという特徴を生かして、新キャラの紹介なども行っていきたいと思っています。YouTubeなどとは違った立ち位置のサービスだからこそできることで、うまく使い分けていきたいですね。毎回、きちんとした番組を生放送していたら、体がもちません(笑) ステータスの調整もギリギリまでやっていることが多いですから。

 

 

▲中村氏は、ミラティブとのコラボについてはDAUや新規ユーザーの増加などはあったが、あくまでコミュティづくりが目的であったと強調した。


――:以前から配信はやってらしたのですか。

中村氏:実はそれ以前は、怖くてやる勇気がありませんでした。スマホゲームの運営をやっているという立場がありますし、プライベートの情報などうっかり発言が出てしまって大変なことになるのではないかと心配していました。

赤川氏:それはお客さんも同様です。当社が意識するのは、配信する際の言い訳を作ってあげることです。「アゲダマがもらえるならやろう」といったことがそのひとつですし、『コトダマン』公式Twitterが想定以上に配信が増えて困っている旨をツイートするなど後押ししてくれたことが大きかったと思っています。「運営を困らすためにやろう」というノリでやっていた方も多かったのではないかと思います(笑)


――:生放送との使い分けですが、イメージとしてはミラティブではカジュアルなコミュニケーションという感じですか。

中村氏:きちんとした生番組ですと、カメラマンやスタジオをきちんと用意する必要がありますし、番組としてのクオリティも大事です。ミラティブはそのハードルがすごく低いですから番組としてのクオリティは求められません。友達の家に行くような感じで、いろいろなチャンネルがあってそれぞれ求めるものがあります。新キャラのステータスの紹介もテストとしてやってみて、良かったら以後は速報として降臨なども含めてお見せしたいです。ユーザーさんと一緒に作るゲームを体現できるコンテンツになると期待しています。

赤川氏:カジュアルさは重要なポイントです。ミラティブでも配信のことを「番組」と表現をしないようにしています。中村さんがおっしゃったように、YouTubeとは競合しません。

中村氏:ミラティブでは自分の外見を映さなくていいので、他の動画配信よりもはるかに気軽です。自分の外見が写るのは結構なハードルですよね。『コトダマン』は、人のプレイを見ていると口出ししたくなるゲームですから、ゲームを通じた会話も成り立ちます。とても相性が良いんだろうと思っています。

赤川氏:ミラティブは、リアルタイムのやり取りを重視していて、ラグが少なくなるように心がけています。配信する側も視聴する側もお互いの動きが同時に反映されれば、配信者は視聴者のアドバイスやコメントを参考に攻略することができますし、視聴者側も参加感が強まるでしょう。

中村氏:ヒントやアドバイス以外にも、間をもたせるためにもコメントが大事です。以前、人気YouTuberの収録現場を拝見したことがあるのですが、誰もいない中で、リアクションが一切無い状態で1人で笑ったり話したりするのは凄いなと。普通の人にはなかなか難しいと感じました。

ミラティブは、コメントを見ながら配信できます。当初は10分程度で終わらせようと思っても、コメントに答えていたら30分経過していたこともありました。ニコ生やYouTube Liveよりもコメントが出やすい空気感がありますし、Twitterとの連動性も高いです。

赤川氏:コメントのしやすさは意識しています。実際、無言配信であったとしても「ランクが高いですね」などとゲーム画面がきっかけになってコメントがもらえます。承認欲求やコミュニケーション欲求が満たされているのではないかと思います。

いまYouTuberとして活躍するのは大変です。すごく話がうまいか、一芸に秀でているか、容姿が優れているかのいずれかが必要です。それに当てはまらない人でも、ゲームの配信なら、たくさん課金してガチャに一喜一憂する人やあまりにヘタで突っ込みたくなる人など、さまざまな形でコミュニケーションのきっかけができます。ネット上に同じ趣味の人が集まる場所が少なくなっており、そういった場にできればと考えています。


 

▲赤川氏は、ミラティブでの配信活性化のポイントは動画配信へのハードルをいかに下げるかにあると語った。ゲーム運営側の協力も重要と指摘した。


中村氏:『コトダマン』は動画配信やSNSでの発信を意識して開発したタイトルです。人気テレビ番組で言葉を組み合わせるクイズがあるくらいなので、言葉を使ったパズルゲームが配信に適しているという確信はありました。Twitterでも毎日できあがった面白い言葉をツイートしてくれる方がいます。

配信当初、話題になったツイートなどありましたが、単にステージをクリアすることだけが楽しいのではなく、その途中で生まれる童心に帰る言葉の成立や、マルチプレイで思わぬコンボが生まれたときの感動など、途中のコミュニケーションが楽しくなるように意識して制作しています。



――:ところで、ミラティブはマーケティング施策上、どういった位置づけにあったんでしょうか。

中村氏:マーケティング上の位置づけは、あくまでコミュニティづくりとなります。とんでもない数のアゲダマを配布したことでバズった部分がありますが、プロモーションよりもすでに遊んでいる人の継続率を重視しました。もちろん、多くの人が配信して目に触れる機会が増えたことで新規ユーザーの獲得が可能になったかもしれませんが、あくまでコミュニティづくりと満足度を高めて継続率を上げることが目的でした。


――:最後にこれからやりたいとことがあれば。

中村氏:賞金首キャンペーンといって指定したコトダマンを倒した画面のスクリーンショットをTwitterに投稿してくれたら抽選で賞品をプレゼントする企画を行ったのですが、これと同じことをミラティブでもやりたいと思っています。

クリアするまでの過程がみられるので、攻略方法を学ぶことができます。ある種の上級者によるプレイ指南になればいいと思っています。ミラティブは大変使いやすいサービスで、誰でも配信が手軽にできます。特に怖いところもないので、このようなキャンペーンを通じて、配信のハードルをさらに下げたいと思っています。今後も手を変え品を変えやっていきたいですね。

赤川氏:以前やった施策もいまやったら効果が変わるでしょうし、クイズだけでもリテンションが大きく変わります。中村さんのおっしゃった企画ですと、配信する人のアクティビティも活性化して、長く遊んでいただけると思います。セガゲームスさんの『コトダマン』の成長に貢献できればと思っています。


――:ありがとうございました。

株式会社セガ
https://www.sega.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社セガ
設立
1960年6月
代表者
代表取締役会長CEO 里見 治紀/代表取締役社長COO 杉野 行雄/代表取締役副社長 内海 州史
決算期
3月
直近業績
売上高1916億7800万円、営業利益175億3900万円、経常利益171億9000万円、最終利益114億8800万円(2023年3月期)
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ミラティブ

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