【インタビュー】キャラクターや世界観を生み出すイグジス クリエイターの指揮を執るアートディレクターが語るイグジスらしい“こだわり”とは?


昨今のスマートフォン向けゲームでは、内容もさることながらイラスト表現の質も向上している。「美麗なイラスト」だけでなく、動きや個性、世界観などの作品全体との結びつきもユーザーからは求められてきているようだ。
 
Exys(イグジス)株式会社はそういった世界観やキャラクターの個性などを生み出す事を大事にしている会社だ。クリエイター陣の制作環境にもこだわりをみせている。
 
今回「Social Game Info」では、同社のアートディレクションを担当している田中克樹氏(写真左)と比嘉真樹子氏(写真右)にインタビューを実施。同社の制作体制やチームとしてのクリエイターの在り方などのお話をうかがった。


■求められるクオリティの向上、演出面でのこだわりも


———:よろしくお願いいたします。それではまずは現在のポジションやご担当されている内容を教えていただけますでしょうか。

田中氏:僕は、今年入社なんですけど、入ってすぐにAD(アートディレクション)を担当させていただいています。その後、半年が経ってマネージャーになりまして、クリエイターの指揮を執るというような形でやらせていただいています。

比嘉氏:前職でも同じような仕事はしていたのですが、私も同じく、Exysには入社して1年とちょっとです。その時からずっと一つの案件に携わらせていただいていて、主にグラフィック塗りですね。こちらの方を主にやらせていただいています。

全体のADというよりは、塗り方面のクオリティの統一とかですね。


———:もともとお二人とも描くというポジションだったと思うのですが、ディレクションという立場で見ると違いとかはありますか?

田中氏:そうですね。僕は昔から漫画を描いていたので、感覚としては漫画の時にアシスタントへ「こういうイメージに直してくれ」というのとあまり大差はないです。ただ、そのイメージしているものが、自分の完成系というよりも、クライアントからのイメージと自分のイメージを合わせたところでその着地点を探すというのが、ちょっと難しいところですね。

———:よりクライアントのニーズに合わせるという感じですか。

田中氏:もちろん、そうですね。漫画の場合は、自分本位で意外とわがままに描けるところはあるんですけれど、ゲームですからみんなで決めたニーズ感というのを大切にするというのがあります。自分一人の価値観だけではやれないところがあるので、そこの汲み取りが難しいなぁという印象でした。最近は慣れてきましたけどね。

比嘉氏:塗りの方に関してもだいたい似たようなところですね。大人数で同じ作品を作っているので、一人でも違うテイストになると必ず浮いてしまうんです。それの統一というのが大変ですね。


———:大人数ということですが、だいたいどのくらいの人数で作品を作っていらっしゃるんですか?

田中氏:そうですね。昨日までの案件が、PS Vita向けゲームの案件のエンディングシーンを2枚急遽仕上げるというものだったんですが、最後にかかっていた人数が7人くらいでした。

比嘉氏:私のところも6~7人くらいですね。

田中氏:全部の工程だと、今お任せいただいている女性向け恋愛ゲームの案件は東京・福岡合わせて20人います。ソーシャルゲームは、最近、どんどんクオリティが上がってるので、かかる人数もコストも肥大化してますね。


———:その辺は、大きく変わっているところなんですね。昔と比べて求められるものが変わってきているということでしょうか?

田中氏:僕は、この世界に入ってきたのが最近なので分からないですが、相当人数かけているなぁという印象ですね。最近依頼された大型案件のアプリとか見ていても、相当クオリティ上がってますもんね。アプリゲームなのにほとんどコンシューマゲームと変わらないぐらいのクオリティでビックリしちゃいました。

比嘉氏:私は前職を含めるとだいたい3〜4年くらいソーシャルゲームにかかわっていますが、そのころからクオリティが徐々に上がってきていますね。

田中氏:クオリティの向上はツールの進化に伴うものもありますね。最近は「Live2D」で2次元が動くというのもありますけど、そもそもキャラクターがゲームの中で動くということがなかなか見れなかったじゃないですか。最近は普通にぐるぐる動くようになって、驚いています。

この間、見たものでは、シェーダーでちゃんとアニメっぽく作られてて、にもかかわらず3Dで動くという、そういったもので感動しましたね。なので、こういうのがこれからの日本の3DCGの着地点という気がします。ピクサーとかのいわゆるCGっぽいアニメとはまた違う、日本の持っているアニメ技術と3Dの融合が今後楽しみだなぁって、自分の中で思っています。


———:なるほど。

田中氏:それと、僕は漫画とかを描くので、人体の演出って大事だと思っているんです。例えばパンチとかをした時に、そのまま正しい大きさで描くと迫力に欠けてしまいます。なので人間の目には錯覚を意識してわざと大きく描いたりするんです。

———:リアルとフィクションの違いですね。

田中氏:そうなんです。表面的なだけでなく、演出もちゃんと意識して作っているゲームが最近で増えてきたというのも、向上しているスピードが凄いなぁと感じます。

比嘉氏:うちの描いている女性向け恋愛ゲームのキャラクターもユーザーの方に手を伸ばす場面とかが多いのですが、そういう時はそうした錯覚を意識したりしています。その辺も演出ですね。

背景とかも実際はあんなに光ることはないです。これでもかというくらいキラキラしてます(笑)


■ディレクションに必要な第三者視点、ADはクオリティを保つための楔のような存在


———:お二人ともクリエイターとADをそれぞれ務められてきた訳ですが、ADという役割ができる方と、クリエイター専業で極めていく方の境目ってどのようなところにあるのでしょうか?

田中氏:イラストを客観的に見られるかどうかだと思います。動きの面とか、クオリティ面を第三者視点で見れることが必要で、なおかつ、みんなよりもある程度絵がうまいとADに向いてるんじゃないかと思います。あとは最初に言ったようにニーズを汲み取れるということですね。

さらにスタッフの人身掌握術に長けてると理想的です。文句を言われないように大変な仕事をさせることもありますから(笑)


———:なるほど(笑)

比嘉氏:結構、気は使いますね。「ちょっとここをね…」みたいに言うわけですから。

田中氏:最終的に責任を取れるというのも大切ですかね。最後に自分が全部巻き取った時にそれ以上のクオリティが出せるという覚悟を持って、やってもらうというのも大事なことです。

比嘉氏:うちの場合は、わりとスケジュールの方がきっちりと決まっているので、「この部分だけお願い」とか、作業をみんなに割り振ったりとかしながら締め切りに間に合わせていたりします。


———:そういった作業の割り振りとかも必要なわけですね。

比嘉氏:なので、やはり日ごろから各人それぞれとコミュニケーションをとっておく必要がありますね。そうでないと作業の細かいニュアンスとかはなかなか伝わらないところがあるので。

田中氏:クライアントの指示書からテイストを汲み取って、それを周りに指示を出すことができ、その求めるよりももうちょっと上のものを出せることが重要ですね。ADというのは、基本的にみんなをまとめられるという存在で、持っているスキルを伝達することができて、クオリティをある一定のラインに保つことができる、そのために存在する言わば楔のような存在だと思います。

比嘉氏:ADはみんなを見る立場なので、その人それぞれの得意分野を生かして、「これだったらこの人にお願いしたら確実だよね」とか「この物だったらこの人にお願いしよう」とか、その人の良さを引き出すことを心がけています。


———:少し話は変わりますが、お二人は元々、他の人の絵を見たりすることが好きだったりするんですか?

田中氏:人の絵を見るのはみんな好きだと思うのですが、直接こう直しちゃうというのは、ちょっと特殊かもしれないですね。人の絵を見てて、黙っていられなくなって、「ここがおかしいんじゃないかな?」と直してしまうというのはありました。そういう人がADに向いてるかもしれないです(笑)

比嘉氏:自分だったらこうするかもみたいな感じですね。

田中氏:なのでアイデアは豊富にないと駄目ですね。

比嘉氏:アクティブに他の人の技術を吸収しようって意気込みも大切ですね。他の人の絵を見て、「あ!この辺はちょっと使える」とか、そういう感じです。自分一人でやってるとどうしても吸収できるものは限られてくるので、他の人のやり方を見て学んだりします。


———:先日、稲冨社長にインタビューさせていただいた時に、世界観を作り上げることや、オリジナルIPを生み出すことへのこだわりといったお話をうかがったのですが、ADとしてそうしたものを作り上げていく上でこだわっていることとかはありますか?

田中氏:稲冨社長とは、今一緒に漫画を作っているんですけど、その時に心掛けているのは、世界観を作り上げていく上で尖がっていくみたいなことですね。絶対にこう誰にも真似できない一つの目立つところをちゃんと作るということですね。そこが見えないと誰も目にとめてくれないです。

僕も頭では分かっているんですけど、絵に落とし込んだ時にどうしても無難な形になったりとかするので、稲冨社長にはいつも怒られるというか、そこは凄く気をつけてます。

 

■Exysらしいこだわりは今ある材料で、与えられた時間で、最大のクオリティを出すこと


———:クライアントからの仕事でもそうしたこだわりとかはあったりしますか?

田中氏:Exysらしさとしては、他社にはないクオリティですかね。

比嘉氏:そうですね。キャラクターのそれぞれの仕草とか、個性とか、可愛らしさとかを表現することは強みにしています。

田中氏:例えば、着彩にしても線画にしてもラフとか完成系の前段階でもExysらしく丁寧な仕事をして、人目に分かりやすく綺麗に作り上げていますね。

比嘉氏:その辺は、他社さんと違うところで、先方からも最初からとても綺麗に入れてもらって助かると言われることが多いです。

田中氏:なので、例えば三国志をテーマにしたゲームの案件の時も背景担当がコンセプトアートを描いていましたが、もともとざっくりでいいという指示はあるんですけど、ざっくりでは詰め切れないので、しっかりと描き込んでいました。そこら辺の意識はかなりみんな高いですね。

自分たちとして、今ある材料で、与えられた時間で、最大のクオリティを出すというのが、Exysらしさなのかなと思いますし、大切にしています。

比嘉氏:指示書の段階で、もうちょっとこうしたら良くなるのにとかは、こちらからも提案します。

田中氏:何パターンかアイデアを出して、描いてみるとか。

比嘉氏:それで、「こちらとこちら、どちらがよろしいでしょうか?」みたいな感じで出したりもしますね。

田中氏:クリエイターから僕にアイデアが上がってきて、僕もどれもいいなぁと思う場合とかは、クライアント側に出して判断を任せるということもあります。


———:なるほど。そうなると、これから御社に入ってきて欲しい人材とかもそういった丁寧な仕事ができる方が理想だったりするんでしょうか?

比嘉氏:自分から提案できるような方だとなおさらいいですね。結構、絵を描く方は内に内に入りがちなところがあるのですが、それを外に出せるというのは大切だと思います。内気というのはしょうがないんですけど、それを克服できるかどうかですね

田中氏:ADとしてということであれば、面倒見がいいといいですね。いきなりADというは、経験がないとなかなか難しいとは思いますが、クリエイターとして入社してきた方がキャリアアップの1つとして、ADを経験してみるのもいいと思います。他の人の絵を見たりすることで、いろいろと経験することは自分自身のスキルアップや勉強という点でもプラスになると思います。


———:本日は貴重なお話をありがとうございました。ところで先ほどから、ずっと何か描かれているのが凄く気になっているのですが…

田中氏:何だか分からないキャラですが、ソーシャルゲームインフォさんが、世のソーシャルゲームの裏を暴くみたいな、そんな感じで描いてみました(笑)
 

———:ありがとうございます。(笑)

今回は、ADの田中氏と比嘉氏に、実際の現場の生の声やアートディレクションの立場という貴重なお話をうかがえた。Exysでは、そうした現場で、ともに働く人材の採用を強化しているとのこと。特に自分で作品を生み出していけるようなアイデア溢れるクリエイターや、これからもっと成長したいと考える成長意欲に溢れるイラストレーター、漫画家など積極的に採用と考えている
 
(取材・文:編集部  柴田正之)


 

Exys 採用ページ



 
Exys株式会社
http://www.exys2008.com/

会社情報

会社名
Exys株式会社
設立
2008年2月
代表者
稲冨 正博
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