【インタビュー】絶好調のサイバーエージェント新作『ロイヤルフラッシュヒーローズ』の開発陣に訊く制作秘話。新しい概念のマルチプレイも考案中


サイバーエージェント<4751>の新作ネイティブアプリ『ロイヤルフラッシュヒーローズ』が好調だ。iOS版のリリースからわずか6日間で100万ダウンロード突破(関連記事)したことをはじめ、App Store/Google Playの両アプリストアの売上ランキングでも堅調に順位を伸ばしている。
 
そもそも本作は、同社のAmeba事業が初めてフル3Dグラフィックに挑戦した、スマートフォン向けポーカー・コマンド・バトルRPG。プレイヤーは、10体のキャラクターを配置した「隊列」と、ポーカーの役をそろえることで「スキル」を発動させ、強大な敵と戦っていく。戦闘時の派手なエフェクトで爽快感を味わえるほか、50名以上の豪華声優陣が出演していることも特徴だ。
 
今回「Social Game Info」では、新機軸のゲームジャンルを生み出した、同作の開発陣にインタビューを実施。開発経緯やゲーム上でこだわった部分など、様々な視点からお話を聞いてきた。
 
 
 


 

■対戦・協力…これまでには無い新コンテンツも考案中



株式会社サイバーエージェント
『ロイヤルフラッシュヒーローズ』 プロデューサー
稲佐将大 氏 (写真中央)
 
『ロイヤルフラッシュヒーローズ』 Unityエンジニア
西澤裕樹 氏 (写真左)
 
『ロイヤルフラッシュヒーローズ』 3Dデザイナー
筒井 豊 氏 (写真右)


――:本日はよろしくお願いします。はじめにみなさんの開発現場における役割を、自己紹介も兼ねてお願いします。
 
稲佐将大氏(以下、稲佐):『ロイフラ』では、プロデューサーを務めています。クオリティチェックや今後の施策、売上管理などタイトル全体を見ています。
 
西澤裕樹氏(以下、西澤):私はもともとサーバーサイドエンジニアでしたが、Unityにおける開発をきっかけに、『ロイフラ』ではフロントエンドエンジニアを担当しています。
 
筒井 豊氏(以下、筒井):デザイナーとして、3D周りやカメラアングル、エフェクトなどの演出面を見ています。


――:それでは、『ロイヤルフラッシュヒーローズ』の開発経緯についてお伺いしたいと思います。かなりバトルシステムが特徴的ですが、どのようにして生まれたのでしょうか。
 
西澤:じつは本作は、弊社で開催した『モックプランコンテスト』というゲームの企画をモックにして提出する企画コンテストに、私が提出した作品をきっかけに生まれました。当時私は別のタイトルでエンジニアをやっていましたが、仕事終わりや休み時間などを利用してモックを制作し、企画コンテストに提出したところグランプリを獲得し、実際にプロジェクトが立ち上がることになりました。
 
その企画コンテストには、「3D推奨」「新規性」といったテーマが設けられておりました。そのなかの「新規性」として、最初に隊列をコンセプトに据えたバトルシステムを考え、さらに操作をしていて「気持ちがいい」と思える要素としてポーカーを融合させることを思いつきました。


――:ポーカーの要素は早くに取り入れられたのですね。何か個人的にポーカーに対する思い入れなどはあったのでしょうか。
 
西澤:いえ、それが特別ポーカーに対してはそこまで…(苦笑)。どうしてもバトルシステムにおいては、キャラクター同士で“連携”をさせたかったんです。ただ、今までプレイヤーが全く知らないゲームのルールではなく、既にルールを知っているゲームの方が、すぐ慣れてもらえるだろうと思ったので、既存のゲーム(遊び)で連携がうまれるものといえば「ポーカーだろう」とスムーズに決まりました。
 



――:具体的に開発が始まったのはいつごろでしょうか。
 
稲佐:企画コンテストの結果発表が2014年4月にあり、ゴールデンウィーク明けの5月頭には開発チームが組まれていました。開発チームには、企画発案者の西澤を筆頭に、私がプロデューサーとして加わり、そのほかUnityが得意な精鋭メンバーで構成されています。開発当初は10数人でしたが、現在は30人近いメンバーで開発・運営を行っています。ゲーム開発にかかった期間は約10ヵ月でした。


――:10ヵ月とは結構早いような気もします。実際に開発はスムーズだったのでしょうか。
 
稲佐:当初はもう少し早めにリリースする予定でした。じつは開発から半年ほどで最低限動く形まで出来上がったのですが、よりコンシューマに近いゲームシステムへと昇華させていくため、細かい演出部分などを4ヵ月かけてブラッシュアップしていきました。
 
また、同じくしてポーカーに関わるゲーム性の部分も大幅に仕様変更しました。選んだ役に応じて「ストレート攻撃」「フラッシュ攻撃」など、攻撃にいくつか種類があるのですが、当時は、その攻撃にキャラクターの個々のスキルが絡んでいませんでした。それはそれで爽快感はあったのですが、一定のスキルのみが発動するだけでは単調にもなりますし、なおかつプレイヤーが発揮できるテクニックが乏しくなるのではないかと思い、現在のキャラクターの個々のスキルも絡み合って攻撃が発動する形に変更しました。


――:なるほど。企画者として、西澤さんは何か開発中でこだわったところはありますか。
 
西澤:私自身もゲームが大好きなので、初心者からコアゲーマーまで楽しめるような仕組みにしようと意識して開発しました。そのため、開発メンバーにも私自身のコアゲーマーとしての意見も伝え、積極的に議論しましたね。
 
稲佐:思い返せば、西澤の説得力はすごかったです(笑)。開発から半年経過してから仕様変更することになったほどの「ポーカー部分が単調すぎる」という懸念も、開発開始して3ヵ月目頃から西澤がそのことを指摘していたんですよ。彼の企画発案者ならではの的確な意見で問題点を発見でき、ゲームのクオリティも上がっていったと思います。


――:また、『ロイフラ』を語るうえで欠かせないのが3D部分だと思います。フル3Dでさぞご苦労があったかと思いますが、振り返って筒井さんいかがでしょうか。
 
筒井:じつは、もともと私は3Dデザイナーではなく、2DのUIデザイナーとしてこのプロジェクトに入りました。ただ、実際に3Dデザイン周りを見る担当がいなかったため、私が外部の3D制作会社さんとやり取りをすることになり、現在の体制までに整えていきました。
 
稲佐:開発から3ヵ月ぐらいは、筒井にはUIデザインと3Dを兼務してもらっていました。
 
筒井:そうですね(笑)。その後は、UIデザインを別の者が担当し、私は3D制作や演出に注力していきました。
 

▲キャラクターのイラスト(左)と3D(右)


――:とはいえ、3Dに関しては初めてのことが多いなか、あれほどまでのボリューム満点の3Dデザインを表現するのはかなりご苦労があったかと思います。具体的な開発フローはどのような感じになっているのですか。
 
筒井:まず外部の3D制作会社さんと仕様を決めるところから始めました。たとえば、負荷検証のことも鑑みて、「3Dでどのくらいのクオリティが出せるのか」など仕様を決めた後、量産できる体制を整え、そこからはプロの3Dデザイナーの方に1体ベースを作っていただき、制作に臨んでいきました。
 
ゲーム画面には10体もの3Dキャラクターが出てくるため、だいたい1000ポリゴンで調整していきましたが、少ないポリゴン数で作られた3Dキャラクターでも、いかに可愛く魅力的に表現できるかは、制作会社・開発メンバー共にこだわって制作していきましたね。


――:3Dキャラクターですが、バトル中もかなり動きますよね。加えてカメラアングルなどの演出周りも格好いいですし。
 
筒井:ありがとうございます。先ほど話にも出ましたが、やはり我々としてはコンシューマゲームに近いものを目指して開発に臨んでいましたので、少しでも格好いい演出になるよう細かいところまで強くこだわりました。とはいえ、あまり動かしすぎてバトル自体のテンポが悪くなってしまうと元も子もないので、そうしたバランスは意識して開発しました。ぜひ、ちびキャラが大胆に動き回る姿を見て楽しんでほしいですね。


――:3Dキャラクターに関していえば、個人的に事前登録のときに公開されたプロモーションビデオ(PV)には驚きました(笑)。あれはどういった経緯で実施したのでしょうか。
 
 

稲佐:通常のゲームPVは、その多くが世界観やゲームシステムを見せるのがほとんどだと思いますが、今までにない話題をよぶPVを作りたいと考えたのです。そこで弊社のアートディレクターと外部の制作会社と一緒に考える過程で、ちょうどその頃に3Dキャラクターも完成し始め、かつ声優陣も豪華な方々を起用していたので、ひねり出した結果……あのPVが完成しました(笑)。
 
PVで流れる音楽は、数々の名作RPGの音楽を担当されてきた伊藤賢治さんに担当していただいています。『ロイフラ』の一部楽曲も伊藤さんに手掛けていただきました。また、歌は声優の茅野愛衣さんに歌っていただいているのですが、じつは内田真礼さん、早見沙織さん、日笠陽子さんといった人気声優陣の方々が“合いの手”を入れているという非常に豪華なPVになっています(笑)。
 


――:なんとも贅沢な内容になっていますね(笑)。ユーザーさんからの反響はいかがでしたか。
 
稲佐:先日開催された「ニコニコ超会議」の弊社ブースで、『ロイフラ』のコーナーのときにこのPVを流したら、コメントで「何事だwwwww」と良い意味で戸惑ってくれて、強烈な印象を与えることができました。このPVは、今後もプロモーションに活用できるかもしれませんね。


――:分かりました(笑)。では、実際にリリースしてからの反響はいかがでしょう。
 
筒井:『ロイフラ』はAndroid版を4月9日にリリースしたのですが、じつは3月末にクローズドβテスト(CBT)を実施していました。その時の反響が、とても良いものでした。もう……嘘かなと思ったほどです(笑)。
 
稲佐:ネット上の掲示板やSNSでも反響を調べてみても、定量的にも定性的にも非常に評価が高かったんです。正直、新規性のあるゲームシステムですし、最後の最後まで「大丈夫かな…」と不安もありました。ですが、こうしてネガティブな視点を常に意識しながら作れていたことが、結果的に都度問題点を潰せることができ、クオリティの高いタイトルへと昇華していったのかもしれません。とにかくプレイヤーに受け入れられたことが、何より安心しましたね。


――:ユーザーからは具体的にどのような要素が好印象だったのでしょう。
 
西澤:戦略性のあるゲームシステムや3D演出など、多くの人に「コンシューマ並のクオリティ」と言っていただけました。なかでも開発陣が嬉しかったのは、リリース当初からプレイヤーのみなさんに「どういう隊列を組めば最適なのか」といった、ゲームシステムに関する議論を積極的にしてくれたことでした。
 
稲佐:本来ならCBT後、正式リリースまで数週間間隔を空けるのですが、ありがたいことにプレイヤーの皆さんの熱量も高かったので、CBT後1週間ほどで正式リリースしました。


――:『ロイフラ』における今後の展望について教えてください。
 
稲佐:具体的にはまだ言えないのですが、複数のプレイヤー同士でプレイする仕組みの導入を検討しています。ここの部分は西澤が担当しており、現在も実際にトランプを使いながら、ストップウォッチで考える時間のシミュレーションをしたり、ゲームシステムとして面白いか議論したりと、導入に向けて動き始めています。
 
西澤:いま稲佐から話があったように、誰かと遊ぶことによって、もっとゲームが楽しくなるような新コンテンツを考えています。恐らくこれまでには無い新しいコンテンツになると思いますので、ぜひご期待いただければ幸いです。
 
筒井:デザイン周りでは、まだまだカメラアングルなど演出部分をブラッシュアップしていく必要があると感じています。たとえば、役が揃った瞬間のエフェクトをより格好いい演出にするとか、ステージに新しいギミックなどを取り入れて、今とはまた別の新しい遊び方が出来るかもしれません。新規性のあるゲームだからこそ、『ロイフラ』には様々な可能性があると思っています。引き続き、ご注目ください。


――:また、現在御社では新しい人員を募集しているとのことですが、Ameba事業本部ではどのような人物像を求めているのでしょうか。
 
稲佐:「こういうものを作りたい」という熱い気持ちを持っている方と一緒に働きたいですね。それは「戦略性のあるコアゲームを作りたい」など何でも良いと思います。何かしらプロダクトを作り上げて、お客様に提供するということに対して情熱を持っている方をお待ちしております。
 
西澤:エンジニアとしては、今後も弊社ではUnityを強化していくので、Unityスキルを高めていきたい方は、現在のサイバーエージェントには適しているかもしれません。職種関係なく様々な仕事に携われる機会があるため、色々なことに挑戦したい方は、ぜひご応募ください。
 
筒井:やはり見た目の演出部分に並々ならぬこだわりを持っていて、「これ面白そうだよね」「このカメラアングル良いよね」と、一緒にタイトルのクオリティを高めていける方を求めています。サイバーエージェントではこれからネイティブゲームの開発に力を入れていくので、その流れとともにデザインのクオリティも高めていきたいと思っています。
 
 
――:本日はありがとうございました。
 
(取材・文:編集部  原孝則)


■『ロイヤルフラッシュヒーローズ』
 

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■サイバーエージェント

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株式会社サイバーエージェント
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会社情報

会社名
株式会社サイバーエージェント
設立
1998年3月
代表者
代表取締役 藤田 晋
決算期
9月
直近業績
売上高7202億0700万円、営業利益245億5700万円、経常利益249億1500万円、最終利益53億3200万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
4751
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