サイバーエージェント決算説明会「とても順調だった」ネット広告、ゲーム、Amebaが伸長 短期間で350万DL達成した『755』に追加投資も

サイバーエージェント<4751>は、1月29日、2015年9月期の第1四半期(14年10~12月期)の連結決算を発表するとともに、東京都内で決算説明会を開催した。発表した決算は、売上高が前の四半期(14年7~9月期)に比べて9.8%増の634億円、営業利益が同70.7%増の125億円と大幅な増益を達成した。前年同期(2013年10~12月期)との比較でも、売上高45.1%増、営業利益194.0%増と大幅な増収増益となった。

決算説明会に臨んだ藤田晋社長(写真)は「Daum Communications株式の売却によって大きく利益が出たが、その分を差し引いても増収増益だ。売上高・営業利益ともに過去最高を更新した。とても順調だった。」と振り返った。そして「インターネット広告事業、Ameba事業、ゲーム事業がいずれも順調だったが、特にAmeba事業は構造改革が功を奏して大幅な増益を達成した。いま注力中の『755』も大きく伸ばすことができた」と述べた(以下、断りがない限り、「」内は藤田社長の発言)。

「(会場からの質問で)順調というご指摘をいただいたが、確かに順調だと思う(笑)。1-3月期もいい状況で推移している。ただ、経営トップとしては、”危機感がない”という状況はリスクであり、そういうことが起きないようにしなくてはならない。明日、”あした会議”(役員対抗の事業立案コンテスト)を開催するが、大きな目標を立てて危機感をもってやっていきたい」と語り、あらめて兜の緒を締める考えを示した。



■10~12月期は売上高・営業利益ともに過去最高に

まず、四半期別の売上高の推移を見ると、10~12月期の売上高は634億円となり、過去最高を更新した。一貫して増収基調を維持しているが、この1年ほどで増収に加速がついたことがわかる。この伸びを支えたのは、なんといっても各種スマートフォン向けサービスだ。スマートフォン関連の売上高は445億円となり、会社全体の売上高に占める割合は77.1%を占めるまでに成長した。「2011年はほとんどゼロだったが、この4年でここまで力強く伸びた」と語った。スマートフォンに早めに対応したことが成長につながったといえよう。
 


続いて四半期別の営業利益の推移だが、10~12月期は125億円だった。ここから株式売却益という「一過性の利益」を除くと76億円となる。つまり、2014年1~3月期に記録した過去最高益となる65億円をも上回ったのだ。継続的な事業による成長だけで過去最高を更新した。
 



■通期予想は据え置き…『755』に追加投資も

続く2015年9月期の連結業績予想は、従来予想から変更なく、売上高が前期比16.9%増の2400億円、営業利益が同26.0%増の280億円となる見込み。いずれも前期に続いて、過去最高の売上高・営業利益を更新する見通しだ。
 


通期計画に対する進捗率は、売上高が26%、営業利益・経常利益・最終利益が45%と高水準で、傍目には上振れ必至のように思える。上方修正する必要はないのだろうか。こうした見方に対し、藤田社長は、「第2四半期(1~3月期)も順調に推移しているが、下期に『755』への追加投資のほか、動画サービスへの投資も行う可能性があるためだ」と語り、業績予想を据え置いた理由を説明した。セグメント別の進捗率も公開され、投資育成事業が通年の計画を達成し、ゲーム事業が大きく超過していることが示された。
 



続いてセグメント別の状況を見ていこう。

■ゲーム事業はネイティブゲームが伸び最高収益に

ゲーム事業は、売上高が前四半期比4.3%増の143億円、営業利益が同19.4%増の35億円と売上高・営業利益ともに過去最高となった。この成長を支えたのは、国内のネイティブゲーム事業だった。売上高が76億円となり、前の四半期に比べて13.4%と2ケタの増収を達成した。特に好調だったのは、Cygames『グランブルーファンタジー』で、国内アプリストアの売上ランキングで5位に入った。
 



アプリのリリース状況は、2014年10~12月期では『モンスターパズルアドベンチャー』や『東京マッドカーニバル』、『ミリオンサーガ』など6タイトルの提供を開始し、1~3月期においてはさらに5タイトルをリリースする予定。特に『リトルノア』は事前登録者数が10万人を突破した。「コストも時間もかけたタイトルで期待している」とのことだった。
 



■Ameba事業…構造改革が奏功

アメーバ事業は、売上高が前四半期比で2.1%増の95億円、営業利益が同43.1%増の20億円だった。こちらも過去最高の売上高と営業利益を記録した。広告収益と課金収入が伸びたことに加えて、「去年の夏に実施した構造改革の効果が出た」という。社内的には100億円の利益を出したいという目標を出しているそうだ。
 


「課金売上高は、スマートフォンのブラウザゲームが中心だったが、成長しづらい市場環境になっている。なんとか維持している状況だ。現在、それ以外の収益源を育てているステータスにある」という。1~3月期において、ネイティブゲーム3タイトル、ブラウザゲーム2タイトルのほか、企業や個人が簡単にHPを作れる「Ameba Ownd」を2月に提供開始する予定で、成長ドライバーに育てていく考え。また「Spotlight」も1000万MAUに到達し、1月にネイティブアドの強化も行っているとのこと。
 



■インターネット広告…アドネットワークが好調

ネット広告は、売上高が前四半期比で7.1%増の331億円、営業利益が同32.1%増の28億円だった。スマートフォン向け広告の売上高が14.2%増の216億円となり、収益拡大を牽引した。スマートフォン広告市場の成長を取り込んでいることが要因で、特にアドネットワークが伸びたそうだ。藤田社長は、「インターネット広告事業における当社の強みは運用力だ。近年、ディスプレイやアドテクノロジー、サイトリスティング、SEMなど運用の重要なサービスがトレンドとなっている。こうしたトレンドに当社の強みはマッチしているのではないか」とコメントした。
 



また利益率の改善に寄与した要因として、オペレーション業務をベトナムに移管したことも一因。藤田氏は「オペレーション業務の移管により、営業利益が1.4億円改善した。これは第2四半期以降も続くので、利益率の改善は続くだろう。」との見方を示した。さらに3月期末に広告出稿が集中し、第2四半期に収益が伸びる傾向にあるという。



■大規模プロモーションでDL数を急増させた『755』

メディアその他事業では、現在、『755』のサービスに注力している。年末年始にテレビCMを中心とする大規模プロモーションを行った。「昨年の2月にサービスをリリースし、半年ほどで80万ダウンロードまで伸ばした。その後、テレビCMを行ったところ、350万ダウンロードまで伸ばすことができた。プロモーションは大成功だった。非常に勢いが出ているので、たたみ込むように3月にもプロモーションを行いたい」と述べた。下のスライドは、『755』のダウンロード数の推移を示したものだが、大規模プロモーションでダウンロード数を大きく伸ばしたことが見て取れよう。
 

会場からは『755』のマネタイズに関して質問が出た。藤田社長は「マネタイズについては全く考えていなかった。マイページを3回表示するたびに1回広告を出すなどユーザーに負担をならないようにするアイディアも出たが、ある一定規模に広がるまでマネタイズはやらない方針だ。マネタイズは比較的簡単ではないかと思う」と回答した。

またこの事業では、エイベックスGHDとの合弁会社「AWA」がサブスクリプション型(定額制)音楽ストリーミングサービス「AWA」をリリースする予定。会場からは「AWA」の展開について質問が出た。「3月にも提供開始する予定だ。音楽はスマホのキラーコンテンツ。すごく良いサービスを作ることが大切で、楽曲が揃っている、楽曲配信のサーバーのレスポンスが早い、ユーザーごとのカスタマイズができているといったポイントが整えばいけると思う。『755』のようにプロモーションは得意なので、きちんとやれば伸ばせるのではないかと思う」と自信を示した。AWAは持分法会社なので、経常利益以下に寄与してくる見通しだ。

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このほか、動画系のサービスなどを立ち上げて、今後の新しい柱に育てていく計画だ。特に動画系のサービスに関しては、マイナーなものから生放送に近いサービスまで、複数の動画サービスを準備しており、春から夏、秋にかけて順次リリースしていく予定だという。
(編集部:木村英彦)



■関連サイト

決算説明会資料

株式会社サイバーエージェント
http://www.cyberagent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サイバーエージェント
設立
1998年3月
代表者
代表取締役 藤田 晋
決算期
9月
直近業績
売上高7202億0700万円、営業利益245億5700万円、経常利益249億1500万円、最終利益53億3200万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
4751
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