【App Store売上ランキング】月次推移で2014年を振り返る プラットフォーム企業がシェア伸ばす バンナムが躍進 中堅SAPは生き残りへ2極化も

2014年の国内App Store売上ランキングは、長らくトップに君臨していた王者であるガンホーの『パズル&ドラゴンズ』に『モンスターストライク』という挑戦者が表れたことが最大のトピックだろう。また、大手ゲームメーカーやプラットフォーム企業などがネイティブアプリへの注力を強め、これまで市場の中心で競い合っていたSAP企業にとっては、激しい荒波にさらされた環境となった1年でもある。激しい競争の中で上位にタイトルを送り込み、勝ち残る企業、ランキングから姿を消す企業など、まさに悲喜こもごもだ。

今回はそんな2014年の国内App Store市場の様子を、月次推移によって振り返ってみたい。なお、今回は月初(各月1日)ベースの売上ランキングを採用しているため、12月にリリースされたタイトルはデータに反映されていない。あくまで市場のトレンドをとらえるための参考データということでご了承願いたい。
 

■プラットフォーム系企業の存在感が強まる


さて、まずはトップ20にタイトルが何本あったかを集計したグラフを下に掲載してみた。ガンホー、ミクシィに加え、ランクインタイトル数の多い、コロプラとLINEは個別に表示し、大手ゲームメーカー、プラットフォーム企業、その他SAPと、ざっくり国内勢を3つに分類してみた。なお、海外勢は実質Supercellのみとなっている。

このグラフから見えてくるのは、プラットフォーム企業がその他SAPのシェアを奪っていることだろうか。ちなみにその他SAPにはサイバーエージェントグループのサムザップなども含まれている。それらも考慮すれば、実質的にはさらにプラットフォーム系企業の存在感が強まっているといえるだろう。
 


■月初ベースデータでは『パズドラ』が年間通して首位をキープ


続いて、昨年と同様に各社のタイトルのトップ50へのランクイン状況を色分けしてみてみたい。まずは、ガンホー、コロプラ、LINEの3社が下のデータだ。『パズル&ドラゴンズ』と『モンスターストライク』はもっと激しく順位が入れ替わっているかと思っていたが、月初ベースのApp Store売上ランキングでは1年を通して『パズル&ドラゴンズ』が首位を守った形になっている。ガンホーの課題はやはり『パズル&ドラゴンズ』に続くタイトルの育成ということになるだろうか。現状は『ディバインゲート』と『ケリ姫スイーツ』が主にランクインしている状況だが、トップ10圏内に届いておらず、ややパワー不足を感じさせる。今年は『パズル&ドラゴンズ』がピークアウトの傾向も示し始めていただけに、大きな課題と言えそうだ。

一方、コロプラとLINEはともに安定したタイトル数を上位に送り込んでいる。特にLINEは年前半と後半でランクインタイトルの顔触れも大きく変わっており、タイトルの新陳代謝が着実に進んでいることも評価できるだろう。コロプラも『白猫プロジェクト』が年後半に加わってきたことが、上位タイトルの厚みにつながっている。
 
 

■躍進際立つバンダイナムコ


さて、次は家庭用ゲーム大手(バンダイナムコ、セガ、スクウェア・エニックス、コナミ)のデータを見てみたい。2014年はバンダイナムコが大きく躍進した1年でもあった。トップ50の中に7月に8本、12月には9本をランクインさせるなど、上位タイトルの豊富さではコロプラやLINEも超えた状況にある。ただし、トップ10圏内をキープするようなタイトルに欠けていたのも見て取れる。『ONE PIECE トレジャークルーズ』がようやくその兆候を示し、一時、国内App Store売上ランキングでトップに立つなど話題となったことがあったが、そうしたポジションを安定的に築いていけるかどうかが2015年の注目ポイントと言えるだろう。

また、昨年後半に存在感を強めたセガは、『チェインクロニクル』と『ぷよぷよ!!クエスト』という2本柱が年間を通して活躍したことは大いに評価できる。ただ、バンダイナムコと比べると上位タイトルの厚みという点で弱く、この2タイトルに続く主軸の育成が次の課題か。コナミは『ワールドサッカーコレクションS』が上位タイトルとして定着してきた。ここから次の一手がまたれるところだ。

上位タイトルの育成という点で、注目されるのはスクウェア・エニックスだろう。『ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト』に続き、『スクールガールストライカーズ』や『乖離性ミリオンアーサー』が芽を出してきた。今後もFFシリーズの新作タイトルなどが控えており、2015年にさらに存在感を高めることも期待できそうか。
 
 

■グループ総合力でサイバーエージェントが台頭


次に取り上げるのは、プラットフォーム企業と海外勢の動向だ。プラットフォーム企業にはミクシィも合わせて掲載している。もちろん、ミクシィの『モンスターストライク』の大躍進は今年最大のトピックと言えるのだが、ここではあえてサイバーエージェントに注目してみたい。

今回はサイバーエージェント本体のタイトルに加え、サムザップやCygamesなどグループ各社のタイトルも合わせて掲載してみた。決算説明会でネイティブアプリへのシフトが順調に進んだことがクローズアップされたが、そうした状況が下の色分けした図からもはっきりと見て取れる。グループで見ると、月間で最大7タイトルがトップ50に入っている月があり、市場のメーンプレイヤーの一角に台頭してきたと言ってもいいだろう。
 
 

■海外勢トピックは韓国COM2USの『Summoners War』の浸透か


続いて、海外勢だが、たしかに台頭が進んでいるのだが、ちょっと中身に変化がある。それは、韓国のCOM2USの『Summoners War』が着実に日本市場に浸透していることだ。同社の『Summoners War』は米国のランキングでもランクインするグローバルなタイトルであり、2015年も引き続き日本で存在感を放てるか注目しておきたい。一方、米国では圧倒的な強さを見せるKingだが日本ではいま一つの状況だ。むしろ『Game of War - Fire Age』が年後半にかけてランクインしてきたMachine Zoneの方に勢いが感じられるところだ。
 
 

■「中堅SAP」のシェアが縮小、生き残りへ2極化の可能性も


前回と同様に上位50位に2タイトル以上が同時にランクインしたことのあるSAPを「中堅SAP」としてまとめたのが下のグラフだ。はっきり言ってしまえば、プラットフォーム企業のシェア拡大の割りを一番食っているのはここだと思われる。2月には合計15タイトルあったのが12月には8タイトルと約半分にまで縮小している。ただ、『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』を抱えるKLabのようにこの中でも強さを見せる存在はあり、むしろ今後は2極化が進んでいく可能性もあるのではないだろうか。
 
 

■大手ゲームメーカーと国内中堅SAPのシェアが逆転


最後に上位50タイトルの内訳をまとめたのが下のグラフになる。トップ50で見てもやはり国内SAPのシェアが大手ゲームメーカーに浸食されているという構図だ。ちなみに1月の時点では国内SAPの20タイトルに対して大手ゲームメーカーは13タイトルだったものが、12月には国内SAPが14タイトルに対して大手ゲームメーカー15タイトルとタイトル数でも逆転した。
 

2015年もこうした大手ゲームメーカーの攻勢が続くのか、はたまたネイティブアプリへのシフトが進んでいるプラットフォーム企業が今度は攻勢をかけるのか、勢力図の大きく変わる中で国内SAP勢で抜け出す企業はあるのか、興味深い動向が引き続きモバイルゲーム業界で続くことになりそうだ。