サイバーエージェント決算説明会 「スマホシフトを早めたかいがあった」 収穫期入りで売上高・営業利益とも過去最高 スマホゲーム新作は19本を計画

サイバーエージェント<4751>は、10月30日、2014年9月通期の決算を発表するとともに、東京都内で決算説明会を開催した。発表した決算は、売上高と営業利益ともに過去最高を更新するなど好調な内容だった。

決算説明会に臨んだ藤田晋社長(写真)は「2014年に入ってから四半期ベースでの売り上げの伸びが加速しているが、スマートフォンへのシフト・先行投資を早めに行ったかいがあった。スマートフォンの売り上げの推移は、2011年にはほぼゼロに近かったが、第4四半期(7-9月期)には415億円となり、全体の売り上げの4分の3を占めるに至った。その比率はさらに伸びていくだろう」と述べた。そして「これは一過性のものではない」と語り、今後の持続的な成長に自信を示した(以下、特に「」内のコメントは藤田社長の発言)。


■14年9月期は売上高2000億円・200億円の大台に

さて、同社の発表した決算は、売上高は前の期に比べて26.3%増の2052億円、営業利益は同115.3%増の222億円となった。先行投資の収穫期に入ったAmebaを中心に、インターネット広告、ゲーム・その他メディアがいずれも好調に推移したことが主な要因だ。

【関連記事】
サイバーエージェント、14年9月期決算は売上高26.3%増、営業利益2.1倍に 第4四半期期間(7~9月)も順調

 


業績拡大をけん引したAmeba事業は、売上高が40.1%増の24億円、営業損益も前期の82億円の赤字から24億円の黒字に転換した。インターネット広告もスマートフォン向けが伸び、売上高が37.1%増の1127億円、営業利益が7.4%増の88億円となった。ゲーム・その他メディア事業も売上高が8.9%増の653億円、営業利益が同3.9%増の87億円となった。また投資育成事業もVOYAGE GROUP株式の売却などにより、営業利益が同297.3%増の27億円となり、全体の収益を押し上げた。
 



■2014年9月期の業績見通し

続く2015年9月期連結業績は、売上高が前期比16.9%増の2400億円、営業利益が同26.0%増の280億円と、引き続き増収・増益となる見通し。
 



営業利益の見通しだが、Ameba事業が「売り上げの伸びに加え、構造改革による販管費の劇的な低下」により前期24億円から80億円に伸びる。「社内目標では100億円必達と話しているが、前の期はショートしたこともあり、コンサバ(保守的)にみた」とコメントした。インターネット広告事業も88億円から110億円への伸びを見込む。

さらにセグメントの見直しを行い、「ゲーム・その他のメディア事業」から「ゲーム事業」と「メディア・その他事業」に分ける。「投資家にわかりづらい部分があったため、わかりやすくする」ことが理由の一つ。そして、メディア・その他事業を今後の成長の柱として育てていく考えもある。この結果、ゲーム事業は90億円の利益計上、新規事業投資などで40億円のマイナスが発生する。

こうした戦略に即し、コミュニティ事業とエンターテインメント事業を統括する宮﨑聡氏と卜部宏樹氏が新たに取締役に就任する。そしてコミュニティ事業の注目サービスは「755」。堀江貴文氏との合弁事業のような形で、今年の2月にリリースした。その後、改修を重ね、秋元康氏やAKB48のメンバーが利用してくれるようになり、会員数が一気に伸びたという。今後、決定的な機能を導入するとともに、年末年始に大規模なテレビプロモーションを行っていく方針だ。

質疑応答では、マネタイズ(収益化)の時期について質問があったが、藤田氏は「当面、全くマネタイズは考えていない。マネタイズに関しては、広告でも課金でもいかようにでもなると考えている。それよりも多くの人に使ってもらい、大きく流行らせることが大切だ。」と述べた。また音楽・動画サービスについてはAmebaの構造改革を行う際に言及されたが(関連記事)、藤田氏は「何も話せないので聞かないでほしい」とだけコメント。近々何らかの動きがあるそうだ。
 

このほか、投資育成事業に関しては27億円から40億円に拡大する見通し。先にDaum Communicationsの株式の売却を行い、すでに42億円の売却益を計上する旨の発表を行っており、計画達成となる確度が高いといえよう。現在、未上場企業がバブル的な状況になっていることを鑑み、新規の投資に関してはやや慎重になっているそうだ。

【関連記事】
サイバーエージェント、Daum Communicationsの株式を売却、42億円の売却益を計上


なお、スライドにある数字だが、前の期は決算賞与を支払い後の数字となっているのに対して、2015年9月期については決算賞与は想定しない数字になっているので注意してほしい。決算賞与は計画を上回った時に支払っているためだ。

続いてセグメント別の状況を見ていこう。
 


■ゲーム事業:ネイティブアプリが伸び過去最高に 新作は19本を計画

ゲーム・その他メディア事業は、海外や国内ブラウザゲームがほぼ横ばいで推移する中、ネイティブアプリが伸び、売上高は過去最高を記録した。とりわけサムザップの『戦国炎舞-KIZNA-』と、Cygames『グランブルーファンタジー』が好調に推移しているという。「大ヒットを出せるかどうかわからないが、大ヒットしなくても売り上げを伸ばしていくためのコツがつかめてきた」。

数字の下がっているタイトルがあるものの、「提供タイトル数を増やすことで増収基調が維持できている。2014年9月期に18本をリリースしたが、次の期は19本リリースする計画だ」と述べた。会場からは新作タイトルにおけるIPタイトルの有無を聞かれ、藤田氏は「IPタイトルはほとんどない」と回答した。

なお、既存タイトルについては、『戦国炎舞-KIZNA-』『グランブルーファンタジー』『ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト』『ポコロンダンジョンズ』『ジョーカー~ギャングロード~』などを伸ばしていきたいそうだ。

すでに書いたようにセグメントの見直しにより、次の決算発表からは「ゲーム事業」と「メディア・その他事業」に分けて発表される予定だ。
 




■Ameba事業 第2四半期以降、成長軌道を取り戻す

Ameba事業もゲーム事業と同様、過去最高の売上規模になった。同事業の人員を第3四半期の1539人から第4四半期には867人に減らした。藤田社長は「リストラというネガティブな側面が注目され、ご心配をお掛けしたが、今後の成長のために規模を縮小して引き締めた。」と語り、収益の悪化に対応したものではなく、次の成長につなげるための施策であることを強調した。

社内目標では100億円を計画しているが、前の期は計画していた50億円には届かなかったため、保守的に見て80億円を計画しているという。収益の源泉である「コイン消費」が横ばいで推移しているが、ネイティブアプリを含めて新規タイトルの投入などで第2四半期以降、成長軌道を取り戻していく考えだ。広告掲載料も第4四半期には40億円に到達した点も見逃せない。
 





■スマートフォン向けがけん引 動画広告に注力

ネット広告事業はスマートフォン向けの売り上げが著しく伸びている。第4四半期では、売上高が前年同四半期比で35%増の305億円となり、過去最高の数字となった。藤田氏は、「スマートフォンの取り込みをいち早くやったことが規模の拡大をけん引している。この傾向はしばらく続くと見ている」と語った。

この伸びを支えているのが、アドテクノロジー事業だ。ゲーム系のクライアントが多いため、リワード広告を中心に伸びており、今後もこのトレンドが続くと見ているそうだ。その他のアドテクノロジー分野に関しては、プロダクトの品質を強化する一方、運用効率を上げていき、今後の成長につなげる投資を行っていくという。

このほか、動画広告に力を入れていくことも明らかにした。Amebaブログでの経緯から芸能事務所と関係が強化しているため、プロもしくはセミプロによるサービスになるという。サイバーエージェントが動画広告に注力するのは、「スマートフォンが普及し、端末を使って動画を閲覧する回数・時間が劇的に増えている。フィーチャフォンでは動画を閲覧することが難しかった」ためだ。
 


なお、藤田氏は、節目節目に数年後の売上や利益などの達成目標を考え、そのためにどういう施策が必要かを考えているそうだ。そして現在、2018年9月期に営業利益1000億円を目標にしていることを明かした。14年9月期の4.5倍になる規模だ。続けて「これは決して到達できない数字」と会場の笑いを誘いつつ、「これまでも行ってきたことだが、大きな目標を掲げることは大きな成長につながる。目標から逆算して必要な事業構成を考えることになるからだ」と述べた。実際、過去に考えた目標も達成したことがなかったが、結果はそれに近しい数字になったという。

早期にスマートフォンへの取り組みを行い、高い成長を実現したサイバーエージェント。アドテク分野の強化に加え、コミュニティサービスやエンターテイメントなどスマートフォンに即したサービス展開を模索するなど、成長のための布石を次々と打っている。2018年9月期はどの程度の「近しい数字」にもっていけるのかも注目ポイントだろう。今後、四半期ごとの売上高、利益の推移だけでなく、中長期的な目標達成という観点からも同社の動きを見ていくのもいいのかもしれない。
株式会社サイバーエージェント
http://www.cyberagent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サイバーエージェント
設立
1998年3月
代表者
代表取締役 藤田 晋
決算期
9月
直近業績
売上高7202億0700万円、営業利益245億5700万円、経常利益249億1500万円、最終利益53億3200万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
4751
企業データを見る