【セミナー】アドウェイズ主催の「PartyTech 2014[夏]」…“休眠ユーザー”の実態やTwitterを活用したプロモーション術が明らかに(前編)

アドウェイズ<2489>は、2014年7月16日にベルサール六本木において、同社が主催のセミナー「PartyTech 2014[夏]~答えは「ユーザー」が持っている~」を開催した。

セミナーでは、アドウェイズをはじめ、IT業界を牽引し世界的にイノベーションを起こす「Twitter Japan」「グーグル」「フェイスブック」「5Rocks」4社のキープレイヤーによる、「ユーザー」にフォーカスした内容で講演が行われた。

多様化する「ユーザー」に合わせたサービス運用やデータ解析、マーケットリサーチなど緻密なマーケティングが求められている昨今、どのようにユーザーデータを活用し、ROI(Return On Investment=費用対効果)やLTV(Life Time Value=顧客生涯価値)最大化へと導くのか……。

前編となる本稿では、アドウェイズによる「休眠ユーザー」をテーマに据えた講演、Twitter Japanによる同社サービスを活用したプロモーション術といった2社のセミナー模様をレポートしていく。

 

■「休眠復帰はある」…期間毎にユーザーの属する経路を再評価


株式会社アドウェイズ
事業戦略統括SVP兼
Bulbit Inc. 取締役CSO横田 雄士氏

はじめにアドウェイズの横田氏が、「休眠ユーザー」をテーマに据えた講演を行った。横田氏は、アドウェイズの子会社Bulbitで取締役CSOとして、全世界に対応したスマートフォンアプリ向けの広告効果測定システム「PartyTrack」を開発・提供している。今回は、この「PartyTrack」を活用して、「休眠ユーザー」の実態を紐解いていった。

そもそも休眠ユーザーとは、ゲームを一度遊んでいたものの、何らかの理由でやめてしまった人のことを指す。昨今では、「休眠ユーザー」“復帰”を課題に運営サイドが努めていることも耳にするが、果たして休眠ユーザーが“復帰”するという、こんな都合のいいことが実際に起きているのか。

「結論から言うと休眠復帰はあります」と語った横田氏。下部の表は、とあるゲームで打ち出した広告指標である。「Clicks」が該当広告をクリックした数、「New」はその広告で獲得できた新規ユーザー数、そして「Return」は休眠復帰ユーザー数となる。それぞれ数字は、3~6日間ゲームにアクセスしていないなど、ユーザーによる休眠日数となるのだが、表を見る限り休眠復帰が実際に起きていることが分かる。
 

なお「PartyTrack」では、新規のインストール数と休眠復帰ユーザー数を並べて見ることができ、広告評価のKPIとして、休眠復帰後の動きをフォーカスしてレポートができるようになるとのこと。リターン後の継続率や課金率など、実際に休眠復帰後のユーザーを切り出して評価できるような形をとっている。「同一ユーザーではあるが、厳密に追うのであれば期間毎にユーザーの属する経路を再評価すべき」と横田氏は語る。

続いても実際に起きた事例をもとに、少し数字をまるめて新規・休眠復帰ユーザーの違いを紹介してくれた。この事例では広告500万円分を配信して、15,000人の新規ユーザーを獲得(その後生んだ利益400万円)、同じく15,000人の休眠復帰ユーザーの獲得にも成功(その後生んだ利益150万円)。このように、きちんと休眠復帰ユーザーに広告価値があることを添えた。
 

ここで横田氏は、気付いたことに関して3点挙げた。ひとつは新規インストール後の継続率と、休眠復帰後の継続率で比較すると、休眠復帰後の方が継続率が低い傾向にあること(例、新規:3日間で40%、復帰:3日間で30%)。もちろん一度遊んだタイトルのため、高いモチベーションを維持するのは難しいものがある。

ふたつ目は、そもそも新規ユーザーの継続率自体が低いアプリであると、ほとんど休眠復帰自体が起きないとのことだ。休眠復帰させること自体は、非常に前向きでいい話であるが、コンテンツそのものに魅力があってこそ、はじめて効果が出るという。また、3つ目は広告の出稿量が多いアプリのほうが、休眠復帰数が多い傾向にある……というのは当たり前の話だが忘れずに押さえておきたいポイント。

これらを踏まえて、横田氏は次のようなことをやっていきたいと話す。まず広告効果の評価指標をインストールベースだけではなく、休眠復帰ユーザーも評価に加えて、広告の良し悪しをより適切に判断すること。そして、休眠復帰をさせたいユーザーには、休眠復帰させるべく作られたクリエイティブを配信。以上の工程で、さらに良質なユーザーも定義してオーディエンス拡張に利用したいとのことだ。

「しかし、同時に課題もある」と横田氏。とくに休眠復帰を狙い撃ちにやる場合は、休眠復帰させたいユーザーを抽出して、リストアップしていく際に、根本的なリストサイズが小さすぎると配信がされないという。加えて、配信対象者の条件をシビアにしすぎると、得てして対象者は少なくなる。もちろん配信事業社と共通の識別子をあらかじめ取得できていないと、ユーザーの紐付けができないため、そもそものリストが作成できないという(IDベースの場合)。

そのため横田氏は、今回登壇した企業たちと連携して、休眠復帰も含め、うまくオーディエンス拡張のようなユーザーデータを活用し、シームレスにより高度な広告運用に取り組んでいけるようなプロダクト作りを目指すというのだ。最後に横田氏は「アドウェイズ、そしてBulbitは、今後も企業間でユーザーデータの理解を深めるお手伝いに努めていく」というコメントで講演を締めた。

 

■ひと昔前の“ゲームの楽しみ方”をTwitterが補完


Twitter Japan 株式会社
オンラインセールス ゲーム/アプリ業界
シニア アカウントエグゼグティブ    瀬尾 洋徳氏

続いてTwitter Japanの瀬尾氏が、同社のサービスを活用した最新プロモーション術について講演してくれた。ご存知の通りTwitterは、ユーザーに支えられているプラットフォームであり、かつユーザーが非常にユニークな動きをするコミュニケーションサービスである。

瀬尾氏は、今回のセミナーのために、Twitter Japanのリサーチチームと共同し、約2,000人の定量・定性調査を実施して、細かい自社データを発表した。とその前に、まずTwitter Japanの広告商品「モバイルアプリプロモーション」の最新アップデートについて語ってくれた。大きくアップデートしたのは次の3点。

①    アプリインストール向けのクリエイティブに
②    store誘導単価が大幅に低下
③    インストール計測が可能に(※特定のSDK実装が条件)

なお、日本国内配信におけるモバイルアプリプロモーションに関しては、なんと利用顧客の継続率が100%という。β版が始まってから2ヵ月ほどになるのだが、1社も途中でストップすることなく継続しているようだ。「非常にユーザーさんとアプリによる親和性が高い証拠だと思っています」と瀬尾氏。

さらに、ターゲティング精度が高くなってきていることも添えた。というのも現在、Twitter IDやメールアドレスなどを指定して広告配信できるとのことだ。新規・既存などの対象ユーザーの切り分けはもちろん、テキストやバナーという多様なメッセージングの発信が実現しているという。

続いて、実際にTwitterユーザーの声を収録した映像を流し、これらのコメントをもとに深いユーザー心理について解説してくれた。通年Twitter上では、共感できる「あるある」ネタやユーモアあるツイートが、日々リツイートされている。ときに広告でも実現できないほどのリツイート数を生み出すことも。さて、膨大なリツイートが生まれることについて瀬尾氏は、「きちんと興味・関心軸で繋がっており、投稿者のフォロワーに該当ゲームユーザーが居ることがポイントになる」と分析してくれた。

シンプルであるが、つまりは“有益な情報や楽しい話題は、みんなで盛り上がりたい”ということにまとめられるようだ。こうした状況のことを、瀬尾氏は「まさに一昔前のゲームの楽しみ方と非常に似ている」と語った。思えば“モバイルゲーム”という言葉が存在しなかった時代、多くのゲームユーザーが友人宅に集まってゲームで遊んだり、それこそひとりでしか遊べないRPGですらもみんなで集まって攻略したり、学校で情報交換したりなど、ひとつの話題を共有することがあった。「そうしたギャップを埋めるのが、Twitterではないかと思っています」と瀬尾氏はコメントを添えた。
 

ちなみに瀬尾氏によると、ゲーム仲間をフォローしている人ほど、課金ユーザー率が高いとのことだ。課金ユーザー率は、「同じゲームが好きなユーザーをフォローしている人44%」、「フォローしていない人16%」と3倍近くの差が出たという。このようにTwitterでは、情報共有できる場であるほか、ときとして仲間意識をきっかけにユーザーの質を高めることができるようだ。
 

また、瀬尾氏は「ダウンロードする」、「ハマる」、「課金する」といったすべてのユーザー行動に対して、「ツイート」が影響を与えられると分析。

たとえば「ダウンロードする」では、“周囲で何が流行っているのか気になる…”というのが一番のポイントという。ひとつの攻略法として、瀬尾氏は「流行っている空気感を出す」とコメントした。Twitter Japanの調査によると、ゲーマーは公式アカウント以外からもTwitter上でゲーム情報を認知しているようだ。ちなみに“Twitterで見たことがあるゲームの情報源”では、「友人や知人のゲームに関するツイート57%」、「有名人のゲームに関するツイート43%」となっている。
 

 
前述した「流行っている空気感」を出すことは難しいものだが、ユーザーによるユニークな投稿をきっかけに、話題化に繋がる例もあるようだ。また、現状Twitterでは話題になっているワードが並ぶ“トレンド”というものが存在。さらに、その枠を24時間買い切ることができる広告枠も存在する。ちなみに、これまでは『キャンディークラッシュ』で話題を拡散させたり、情報を集約させたりするために活用された。

続いて「ハマる」。これに関しては、ゲームの公式Twitterアカウントを通して、最新のアップデートやキャンペーン情報などを継続的に通知してあげることが、ひとつのアプローチとして大切であると語った。公式アカウントであれば、リツイートにも繋がるため、ゲームの認知度を拡散させるきっかけにもなるといえよう。また、公式アカウントからの初出し情報であったり、フォロー&リツイートすることでインセンティブを与えたりと、多種多様な価値を付け加えることでさらなる情報拡散にも繋がるようだ。

最後に「課金する」という非常に重要なポイントについて。そもそもユーザーの本音は、誰しも課金せずにゲームを楽しみたいものである。実際に課金経験がある人については、3人に2人は課金に抵抗があるとのこと。もっとも瀬尾氏は、「本当はほかのユーザーに背中を押してもらいたいと思っているものです」と分析。方法の例としては、ほかのユーザーのプレイ状況を共有させることで、競争心を芽生えさせるのがひとつの手という。あくまでも企業側が後押しするのではなくて、いまハマっているユーザー同士に語らせるのが大切のようだ。企業側のアクションは、そうした場所の提供や情報を集約して一覧で見られるなどの施策を打ち出すことがポイントになりそうだ。
 

「情報はテーマを絞って語らせることで、周囲のユーザーを刺激させられる」と語った瀬尾氏は、ひとつの良いケースを紹介してくれた。映画『ホビット』の公式Twitterアカウントの話なのだが、同アカウントが「映画の感想をつぶやく際は「#ホビット見た」のハッシュタグを加えてほしい」と伝えたところ、ハッシュタグツイート数が9,000件近くに膨れ上がったという。この9,000という数字は点在しているものではなく、まとまった9,000件であることが価値となる。なおかつ、非常に多くの盛り上がりを生み出すことができ、映画を観た人、これから観る人などの各々のユーザーを刺激させられるきっかけに繋がるとのことだ。

余談であるが、瀬尾氏いわくゲームは世の中で最もツイートされているブランドコンテンツのひとつという。というのも、日本におけるフォロワー数1位の企業アカウント・スターバックスが月間104万ツイートであるところ、KADOKAWAの『艦隊これくしょん』は月間193万ツイート、ガンホーの『パズル&ドラゴンズ』にいたっては月間297万ツイートになっているようだ。こうしたように、もはやTwitterはゲーマーにとっての情報受発信の場になっていることは明らかであろう。
 

ユーザーはツイートひとつで互いを刺激あって、それによりアプリのダウンロードや課金などに繋がる。「態度変容がTwitterを通してユーザー間で起きている」と瀬尾氏は語る。こうしてユーザーに気付きを与え、繋がりを強化し、会話を促すことにより、ゲームタイトルにとっても大きなチャンスが生まれるのではないのかと思う。講演の最後に瀬尾氏は、「便利になって失われたものをTwitterが補完することで、もっとゲームを楽しんでもらえると思っています」というコメントで締めくくった。
 

 


後編では、グーグル、フェイスブック、5Rocksの3社による講演レポートを掲載していく。

⇒[後編] GoogleとFacebookが掲げるアプリマーケティングとは。5Rocksが語る「本来注目すべきアプリデータの見方」にも迫る

 
株式会社アドウェイズ
http://www.adways.net/

会社情報

会社名
株式会社アドウェイズ
設立
2001年2月
代表者
代表取締役社長 山田 翔
決算期
12月
上場区分
東証プライム
証券コード
2489
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