【年始企画】18年のスマホゲーム市場はキャラ収集ゲーム中心から多様化へ ユーザー第一の理念を守り革新的なゲームを出したい ネットマーブルのペク共同代表に聞く



スマートフォンゲームアプリ業界の最前線で働く方々に話を伺い、2017年の市場動向と2018年のトレンドを読み解く年始恒例企画「ゲームアプリ市場のキーマンに訊く2017-2018」。今回は、ネットマーブルジャパン株式会社の共同代表のペク・ヨング氏(写真)にインタビューを行い、韓国のディベロッパーからみた2017年の日本のスマホゲーム市場動向やネットマーブルの取り組みを振り返るとともに2018年の展望について話を聞いた。


――:本日はよろしくお願いいたします。すでにご存じのかたも多いと思いますが、ネットマーブルについて改めて紹介をお願いいたします。

よろしくお願いいたします。私はネットマーブル事業戦略を担当していて、ネットマーブルジャパンの共同代表も務めています。

まず、グループ全体を紹介しておきますと、ネットマーブルは、日本だけではなく、韓国、北米、東南アジアなど全世界でモバイルゲームを中心としたサービスを展開しているゲーム会社です。手前味噌ではありますが、各種のマーケットの調査機関で発表しているレポートでは世界トップ5に入っているパブリッシャーとなります。

その日本法人である弊社は、2004年にソフトバンクグループとのジョイントベンチャーとして設立され、PCゲーム、Webブラウザゲーム、モバイルゲームを提供して参りました。現在、主力はモバイルゲームで、『リネージュ2 レボリューション』、『セブンナイツ』、『マーベル・フューチャーファイト』などがあります。

ネットマーブルとしても日本の市場をとても重要視し、日本のユーザー様により良いサービスを提供できるように日々努力しています。


 


――:韓国のトップディベロッパーとして、2017年の日本のアプリ市場をどのように見ているのでしょうか。

数年前の日本のアプリ市場はごく少数のゲームだけで市場を独占していましたが、2017年は複数のゲームがトップを争う、とても競争の激しい市場となったと考えています。またユーザー様に目を向けると、ゲームに求めるクオリティが上がってきていると思います。具体的にはグラフィックだけではなく、シナリオやサービスの安定性などゲームによって提供されるすべての「ユーザー体験」に対して求めるクオリティが高くなってきています。日本のアプリ市場は、今でも十分に競争的ですが、今後はより激しくなり、生き残るのが難しい市場になるのではないかと見ています。


――:2017年は『ナイツクロニクル』と『リネージュ2 レボリューション』をリリースされましたが、2017年の取り組みを振り返っていただけますか。

17年8月にリリースした『リネージュ2 レボリューション』は一定水準の成果を出すことができましたが、『ナイツクロニクル』ではユーザー様のニーズを十分に満たせなかったと思っています。

一例ですが、『ナイツクロニクル』では「リセマラ」の報酬がユーザー様から求めているものではないという声を多くいただきました。当初はネットマーブルの過去の経験などから適切だと考えていましたが、ユーザー様からの実際の反応からそうではないことに気づかされました。また、もちろん『リネージュ2 レボリューション』に対してもユーザー様から多くのご意見・ご要望をいただいており、日々分析と改善を続けています。

ネットマーブルは、ゲームの開発やサービスを提供するうえで、こうしたユーザー様の視点やニーズをとても重要視しています。ユーザー様の声にひとつずつ真摯に向き合い何が足りなかったのか分析を続けることで、今後のゲームサービスに反映させていきたいと考えています。



――:11月25日に開催された「リネレボファンミーティング」など、2017年は『リネージュ2 レボリューション』でオフラインイベントも実施されました。

オフラインイベントを開催して、MMOジャンルのゲームを多くのユーザー様に楽しんでいただいていると実感しました。『リネージュ2 レボリューション』は、日本国内のユーザー様により楽しんでいただくために日本独自の仕様を準備したことが一定の支持を得られた要因と考えています。

また他の国と比べて、オフラインイベントのようなコミュニティをとても大切にしていることも日本のユーザー様の大きな特徴となります。『リネージュ2 レボリューション』のオフラインイベントを通じて、コミュニティやユーザー様同士、さらには運営とのコミュニケーションを大切にする日本のユーザー様の姿を改めて実感することができました。

また、ギルドによってはユーザー様がカフェなどの同じ場所に集まって『リネージュ2 レボリューション』を遊んでいるとも聞きます。トーナメントやユーザー様のオフラインの集いなど、コミュニティの場を積極的にこちらから設けるなど、コミュニケーションの活性化は引き続き行っていきたいと考えています。

現在ネットマーブルでは新しいゲームの開発も行っていますが、日本国内のユーザー様からのご提案とご意見を最大に受け取り、ゲームをどのように楽しんでいるかをきちんと分析して、今後も日本のユーザー様に楽しんでいただけるゲームを提供していきたいと考えています。

 


――:2017年の日本のアプリ市場の振り返ると、ネットマーブルのタイトルに勢いを感じます。競争力の源泉はどういった点にあると考えていますか。

ネットマーブルがゲームを作るうえで最も重要視しているのは「ユーザー様のニーズと視点」です。一般的な海外のゲームディベロッパーの日本法人ですと、日本市場でのマーケティングに徹し、ゲームサービスそのものはそのまま提供することが多いですが、弊社のアプローチ方法は違います。弊社では日本のユーザー様は何を必要としているか、何を求めているかなどマーケットの分析を基にして、市場として望まれていることを開発会社に提供し、日本のユーザー様のニーズや視点に合致したゲームの開発を行い、さらにはサービスの運営ポリシーも決定しています。つまり「ユーザー様のニーズと視点」を第一とすること、これが競争力の源泉だと思います。


――:2018年のアプリ市場の展望についてどのように考えていますか。

2018年のグローバルのアプリ市場は大きく見ると成長を続けると考えています。これから数年間を考えても早いスピードで成長していくのではないでしょうか。理由としては、スマートフォンのハードウェアの性能の向上やネットワーク環境の安定化などが、日本を含めた先進国だけでなく発展途上国でも進んでいることが挙げられます。

実は『リネージュ2 レボリューション』も当初はネットワークの環境の問題から全世界でサービスできるとは思っていませんでした。現在のようにグローバルでサービス提供できるようになったのもネットワーク環境が改善されたからだと考えています。

次に2018年の日本のアプリ市場を見ると、IPを使ったゲームが持続的に成長すると思います。2017年初めから有力なIPを活用したゲームが増えてきて今までスマホゲームを遊ばなかったユーザー様がスマホゲームを遊ぶようになりました。現在のストアの売上ランキングを見てもIPのゲームが上位を占めていて、この状況はしばらく続くのではないかと思います。

またユーザー様のニーズの変化によって、以前はガチャをメインにしたキャラクターを収集するゲームが多かったのですが、今では様々なジャンルのゲームが増えています。『リネージュ2 レボリューション』がMMOのジャンルとして一定の成果をあげましたが、日本のユーザー様のニーズが変わってきたこともひとつの要因ではないかと思います。

 


――:韓国や台湾では『リネージュ2 レボリューション』以外にも『TERA M』や『Lineage M』などMMOのゲームが人気となっています。今後日本でもMMOゲームの市場は拡大していくとお考えですか。

とても難しい質問ですね。『リネージュ2 レボリューション』の成果から考えると、日本でMMOの市場が拡がる「可能性があるのではないか」と思っています。「可能性があるのではないか」という言い方をしましたが、ユーザー様から見て「MMOという難しそうなジャンルのゲームが拡大していく」のではなく、「多くの人たちと一緒にリアルタイムで遊べるゲーム」として市場が拡がっていくと考えているからです。

韓国やアジアの『リネージュ2 レボリューション』のユーザー層と比較して、日本は女性のユーザー比率が多くなっています。これは日本のユーザー様が『リネージュ2 レボリューション』を「多くの人たちと一緒にリアルタイムで遊べるゲーム」として気軽に遊んでいるからではないでしょうか。



――:2018年の貴社はどういった取り組みをされる考えでしょうか。

2018年もユーザー様の視点から満足できるゲームを提供するということは、ネットマーブルの理念であり、グローバルでも日本でも変わることはありません。ネットマーブルとしては、『リネージュ2 レボリューション』に代表されるMMOも力を入れていくゲームのジャンルの一つとなりますが、MMOだけではなくキャラクターのゲームやスポーツゲームなども提供しています。今後も日本のユーザー様のニーズの多様化にあわせたゲームを提供していきたいと思っています。

少し具体的な話をすると、グループで提供するゲームの多くが韓国で開発しています。そのため韓国で先行リリースを行い、その後日本で…ということがこれまでは多かったのですが、今後は日本にて先行してリリースを行うゲームも準備しています。

先ほどもお話したように弊社は日本でユーザー様の目線に立ったマーケティングを行いつつ、ゲームのプロデュースの役割も担っています。この役割を最大限に活かして2018年はより多くのゲームをリリースしたいと思っています。また日本で多くのゲームをリリースするために、事業、マーケティング、広報など多くの人材も必要となりますので積極的に採用を進めています。より多くの社員を迎えいれるため、オフィスを増床するなど社員が良い環境で働けるような取り組みにも力を入れています。

また昨年末から『リネージュ2 レボリューション』と『モンスターストライク』のコラボレーションを実施しています。今後も日本国内で有名なIPと様々なかたちでコラボレーションやタイアップをしたいと考えていますし、日本国内で有名なIPを活用したゲームの開発も進めてまいります。

 


――:最後に読者へのメッセージをお願い致します。

弊社の2017年を振り返ると新しい挑戦を始めた一年となりました。具体的には、『ナイツクロニクル』と『リネージュ2 レボリューション』をリリースしましたが、当初はゲームジャンルなどの観点から日本のユーザー様に受け入れられることは難しいのではないかといった、否定的な声もありました。またマーケティングにおいても新しい試みを行うなど挑戦の連続でしたが、振り返ると一定の成果をあげられた一年だったと考えています。

2018年も引き続き新しい挑戦を行っていきます。それは日本の多くのユーザー様が求めている、ゲーム以上の新たな楽しみや価値を提供するような「革新的なゲーム」を日本でリリースすることです。「ネットマーブル」というブランドも「革新的なゲームを提供する会社」としてブランディングしていきたいと思っています。そのためには、多くのより良い人材を迎え入れて会社としても成長し、今まで以上にユーザー様の視点に立ち新たな価値を提供していきたいと考えています。



――:ありがとうございました。
​Netmarble(ネットマーブル)

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