【セミナー】クリーク&リバー、サイバーコネクトツー松山洋氏の新刊出版記念トークライブを開催 その模様をレポート


 
クリーク&リバー社は、11月7日、サイバーコネクトツー(以下、CC2)代表取締役の松山洋氏の新刊『エンターテインメントという薬-光を失う少年にゲームクリエイターが届けたもの-』の出版を記念したトークライブイベントを開催した。

当日は、松山氏の書籍販売が行われた後、CC2の会社説明及び松山氏によるトークライブが行われた。本記事では、その模様をレポートする。


■松山氏が語る”これから10年の生存戦略”とは?




この日行われたトークライブのテーマは、「設立10年以上のゲーム会社の生存確率は1%未満!? ならば!これから10年の生存戦略をお教えします!」というもの。

「CC2を通していまのゲーム業界とこれからについてお話します」と切り出した松山氏は、まず同社の概要について紹介した。ご存知に通り、CC2は21年前の1996年に福岡から誕生した会社。10名程度の人数でスタートした同社は、家庭用ゲームソフト企画・開発を事業の柱に置き、『.hack//』シリーズや『ナルティメット』シリーズなどの人気タイトルを手掛けている。

また、福岡本社に加え、東京スタジオやカナダのモントリオールスタジオと国内外に拠点を増やしている。このモントリオールスタジオについて松山氏は、「(ゲームを)売るための会社ではなく、作るための会社」と位置づけ、福岡本社、東京スタジオのスタッフと連携をとり、「もっと面白い」「もっと斬新な」「もっと楽しませる」ゲーム作りを行っているそうだ。
 
また、同社はスマートフォン向けのゲームについて6年ほどやってきたが、「向いていないかな」と松山氏。CC2スタッフ、そして自身もスマホゲームも遊んでいるが、「作るのは今はいいかな」と、家庭用ゲームの開発をメインに据えていると語った。


▲同社が得意とするアクションゲームについて、「ボタンがいっぱいあるから気持ちがいい」と松山氏。
CC2が作るゲームはアクション、爽快感、破壊などを売りにしており、そこに特化してゲームを開発している。

現在、CC2では、7プロジェクトが動いているとは松山氏。それはいずれもプレイステーション4向けのタイトルで、まだ紙の上で語っているプロジェクトもあることを明かした。続いて、同社を代表するタイトルについて紹介。『ナルティメット』シリーズは15年続いている人気タイトルということで、よく周囲から「CC2はキャラクターゲームが得意だね」と言われるそうだ。

しかし松山氏は「うちが版権をいただいているのは『NARUTO』と『ジョジョ』だけ」で、それ以外はオリジナルタイトルであることを主張した。もちろん、『NARUTO』と『ジョジョ』以外はやらない、というわけではないそうだが、「版権をいただいて作るからには10年付き合ってください、10年やらせてくださいと言っている」と松山氏。版権を使ったキャラクターゲームを作るためには、それだけの年月と覚悟が必要であることを語った。


▲こちらはCC2を代表する『.hack//』シリーズ。11月1日に最新作が発売された。

▲世界で勝負する新規プロジェクトが進行中であることが明らかに。


​また、同社の社内環境についても触れた松山氏。月60冊以上の定期購読誌が社内に置かれ、それらを自由に閲覧することができるという。また、映画やアニメのブルーレイやDVD(8000本以上)、マンガ(4000冊以上)、ゲームソフト(2000本以上)を揃えたライブラリもあり、社内で共有しているそうだ。

定期購読誌やライブラリについては、「この作品を作るうえで、これとこれは見ておこう」(松山)というときなどに重宝している。この膨大なライブラリを各スタッフがインプットしていることで、魅力的なCC2のタイトルが生まれる秘訣になっているようだ。



 


続いて松山氏は、「今回お話するのは家庭用ゲームが中心です」と数字で見るゲーム業界についてトークを展開。「数字で見るとゲーム業界が裸になります」とし、来場者に向けてゲーム業界の数字に関するクイズを出題していった。


 
まず、1年間で発売される家庭用ゲームソフトのタイトル本数は?(国内/2017年)という問題。通常、ゲームソフトは毎週木曜日に発売され、発売週は52週ある。松山氏が数名の来場者に答えを聞くと、180本という人もいれば、1000本と答える人も。


 
ちなみに正解は、435本。今年の数字を見ると、それまで右肩下がりだったところ、昨年のタイトル数を超えているとのこと。ちなみに、10年前の2007年は毎週10本くらいの新作が発売されていたそうだ。

年間で発売されるタイトル数がわかったところで次の問題は、世の中の子ども達が1年間に何本ゲームソフトを買っているか? 正解から言うと、4.0本(昨年の数字)。



東京ゲームショウに足を運ぶ熱狂的な層の年間平均は8.8本だが、一般的な層はその半分の4.0本という結果に。松山氏は、「皆さん、子どもの頃、どういうときにゲームソフトを買ってもらったかというと、人それぞれではあるけれど、誕生日、クリスマス、お年玉など。平均するとだいたい3.5本くらい」と語り、年間400タイトル以上発売されている中で、一般的な層は平均3本であることを示した。

最後の問題は、今年100万本以上売れたタイトル。数字(実売)は暫定だが、1位から『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』(3DS)の172,8(万本)、『モンスターハンターダブルクロス』(3DS)の166,8(万本)、『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』(PS4)の132,1(万本)、『Splatoon2(スプラトゥーン2)』の(130,9万本)と、国内売上ランキングの上位4タイトルがミリオンを超えている。

そのほか、50位前後のランキング、100位前後のランキングも紹介されたが、100位付近になるとその数字は3万本前後という結果に。それらの数字を元に、ゲームソフトはどれくらいで利益が出るか? 何万本売らないと赤字なのか? という疑問が浮かんでくる。それに対し、松山氏は、「ものによるが、ざっくり言うとPS4だと10億くらい。まともにビジネスやろうとすると、大きな会社は宣伝費などもかかるから、(あくまで目安として)業界的には10万本売れないと赤字です」とした。

そしてさきのランキングを振り返り、「400タイトル出ていても、黒字なのは1~40位の1割。残る9割は赤字です。じゃあ作らなければいいと思うけど、作っている人たちはそのタイトルに夢を持っている」とゲームを作る人たちの気持ちに理解を示した松山氏。ここまで語ったところで、いまのゲーム業界は「黒字タイトルが赤字を埋めているビジネスになっている」とコメントした。



さまざまな数字から、ゲーム業界の現状についてわかったところで、では、これからゲーム業界に入ろうとしている人は何を考えてクリエイターを目指すべきなのか? 松山氏は「今日聞いた話を「へえー」と思うだけでなく、じゃあどうすればいいのかを考えなければいけない」と言う。

また、「何が面白くて売れるのかを知らない人とはミーティングができない」と松山氏。面白いだけではなく、面白そうだと思わせないとゲームは売れない。実際に面白くても、面白そうに見られて売れないと意味がないと語り、「面白そうで、実際面白くて、そして売れるゲームを作るという信念で21年間続けてきたCC2のやり方」(松山)とした。



面白そうに見えて実際に面白く、売れる。それは、たくさんの人の心を動かすことだが、そのためにそれをどう設計すればいいのか? 松山氏は「遊ぶ、読む、観る、体験するということをインプットすること」がその答えだと言う。松山氏自身、業界の仲間との飲み会の席で「最近あの作品を見た。これを読んでみた」という会話のラリーをする中で、自分の知らないタイトルがあると、「こいつは知っているのに俺が知らないと悔しい」と思うそうだ。そして、その作品を買って見てみると、「あいつはこの作品のどこを評価したんだ」という感想を持ち、次の飲みの席でその話をする。そこからまた会話が生まれるということが、クリエイター同士にはある、中にはそうじゃない人もいるようだ。

「昔ほどアニメを見ていない。ゲームをプレイしていない。週刊少年ジャンプやコロコロを見ていない、という人がいるけど、ジャンプもコロコロもまだ売れている。我々のターゲットは子どもなのに、子どもたちが好きなジャンプやコロコロをなぜ見ないのか? お客さんの顔を見ないで売れるものはできない」と、インプットすること、そしてお客さんの顔を見ることが重要であると語った。



▲来場者から、インプットする時間の作り方について質問されると、「移動時間を利用したり、アニメなら
3軍に分けて(3軍は2~3話見て切るか判断、2軍は1.5倍速、1軍は等倍速で観る。映画については今は21
時過ぎでもやっている映画館もある」と、さまざまな方法で松山氏は時間を作っているとのこと。



また、“作る達人は楽しむ達人”という言葉を挙げ、「今のお客さんが何に夢中なのか、そこにアンテナを張らないといけない。ある作品がヒットしたからそれに近いものを作るような猿真似には興味はない。どこか新しいものを作って提供するのがクリエイターだと思う」(松山)と自身の考えを述べた。


最後に松山氏は、ゲームの市場規模に関する話を展開。まず、2015年度のゲーム市場規模推移(日本国内のみ)を紹介し、オンラインプラットフォーム(スマホ&PC)が1兆円に近い数字であることを示した。
一方、家庭用ソフト&ハードは3602億円。「日本国内は10年連続右肩下がりだけど、世界ではPS4が爆売れしています」と松山氏は、PS4の出荷台数について言及した。




​松山氏は、「世界で売れている国内のゲームはたくさんある」と語り、「本物を作ればちゃんと世界で売れる」と加えた。そして、家庭用ゲームは、世界中のゲームプレイヤーがターゲットであり、その市場はワールドワイドであるとまとめた。



 

▲トークライブ終了後、松山氏は書籍購入者へのサイン会や、来場者との懇親会を行った。

 
株式会社サイバーコネクトツー
https://www.cc2.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サイバーコネクトツー
設立
1996年2月
代表者
代表取締役 松山 洋
企業データを見る